Mさん と Jちゃん  10

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今回は「名前」のトレーニングのみです。
「名前」はとても重要です。犬に名前を理解してもわらずして、トレーニングもできないはずです。

尚、この資料は、ある先生が原版を作り、私が加筆・訂正したものです。著作権は弓削明久が所有しております。このページの内容の無断転載等は固くお断りいたします。


・「名前」はコミュニケーションの基本

この連載の「4」辺りで、以下のようなことを書きました。

名前とは「これから私に注目する時間ですよ、」という意味にしてあげてください。「Mさーん!」と呼ばれれば、呼んだ人に注目しますよね。それと同じように教えてあげてください。

「名前」という「コミュニケーションのきっかけ」がなければ、犬は常に人間に注目していなければなりません。もちろん、それも可能です。しかし、それに不向きな犬種もいるでしょう。
それよりも、それによる弊害が心配です。その原因は人間側にあることがほとんどです。常に犬に注目されている、つまり人間の行動全てがコマンドであろうと犬は思い込み、犬が勝手な学習をする可能性があるのです。そんなことを考えながら犬と暮らすのでは、疲れてしまいますよね。
犬の個性ということも楽しみたいし、自分の個性を犬がどのように受け止めるのかも楽しみたいと、思いませんか?





99/10/1      とりあず「名前」     弓削 

「名前」の資料を送ります。
これは以前私がやっていた練習会というものの中で作成したものです。

この会のメンバーはラブ or ゴルのみでした。食べ物につられ易い
犬種です。ですからご褒美はオヤツを使っています。
Jちゃんは、まだまだ子供なので、ゴハンの中から
適当な量を別にして、それをオヤツにすれば良いでしょう。

とりあえず全体を読んで下さい。流れをつかんで欲しいのです。
ポイントは「やることは必ずやる」「ならないことは絶対やらない」という
当たり前のことを守ることです。それと、確実に一歩一歩進むということ。

とりあえず、3日間よ〜く読んで下さい。そして分からない箇所が
あれば質問して下さい。




99/10/1     名前1        弓削

(目的)名前を教える
 名前を呼んだら、こちらを見てくれる(注目する)ことを目的とします。
 「名前を呼んだらこっちへ来る」では、ありません。

(まず初めに)
 オヤツが口に入ると同時に名前を発する。

 「発する」(ハッスルではありません。でも、ハッスルした方が効果は
大きいでしょう。)であって、何故「呼ぶ」ではないのか?
 それは、犬の方が「まだ名前を認識していない」からです。人間側からの
一方的なコミニケーションは反則です。「コミニケーションにおいては、人
と犬が平等」でなければなりません。 「名前を呼んでいるのだから、」と
期待はしないで下さい。この段階では、犬にとっては単なる音(または鳴き
声で)しかありません。

 期待をしないことと楽しまないことは、違います。そう、ハッスルするの
も良いでしょう。色々な声のトーンで呼ぶのも良いでしょう。そこから、
どんな態度の時に、どんな反応をするかを見るのも楽しいです。自分からの
はたらきかけを理解させるだけでなく、犬からのはたらきかけを理解する
ようにしましょう。

 犬は、オヤツをあげている手にばかり注目し、人の顔なんか見ないかも
知れません。それでも名前を呼ばれれば、オヤツがもらえることを理解
できれば、この段階はOKです。
 まずは焦らず、「名前」がオヤツが必ずもらえる特別な音(この時期で
は、まだまだ「言葉」的な認識はないでしょう。犬にとって「特別な音」
の程度と思います。)であることが、分かってくれれば良いわけです。

*注意
 「特別な音」ですから、「特別な時」(=オヤツがもらえる時)以外は発しない
ように気を付けましょう。人間同士の話しの中で、その名前が必要な時は、
別な名前を用意するか、「この人」とか「この犬」などを用いると良いでしょう。
 また、特別なのは「音」だけです。色々な場所、状態、人、で練習しましょう。
そのためには、オヤツを持ち歩いたり、色々な場所にオヤツを常備しておくと
効果が上がり易いです。

 ちなみに「うーにー」の場合は「うーにー」が特別な音です。人間同士用として
「ニャラさん」や「まくさん」があります。中間として「うーにゃん」があります。
 中間の言葉には、反応してもしなくても良いルールになっています。正式
名称を呼ばれた場合は「必ず反応」するのがルールですが、その様な場合は
犬にとって都合が悪い時が多いので、この頃反応が悪くなっている気がします。
そうならないように、常に名前の練習をする必要があると思います。(反省)

 ちなみに「ニャラさん」は「うーにゃん」>「うーにゃら」>「にゃら」。
「まくさん」は「うーにゃら」>「うにゃまく」(=「うーにゃら」が枕になること)
>「まく」と変化してできました。
 変化させた語尾を用いれば、元の音とは違った音になり便利です。


(顔を見る)
 オヤツをあげる時に、顔を見るように工夫をする。

 さてさてどのように工夫をしましょうか? 皆さんはどうしましたか?
単純な方法として、オヤツ(=手)を見ている犬の目線の延長線上に自分の
顔がくるようにする方法があります。これが簡単で良いと思います。
 「名前を呼ぶ」>「オヤツをもらえると思って手に注目する」>
「手を顔の方へ動かす」>「手を目で追って顔を見る。」>「目線が合った
らオヤツをあげる」(この時もう一度、名前を呼んだ方が良いでしょう。)

 このパターンが出来上がってきたら、手を顔の方へ動かすのを止めて
みましょう。
 「名前を呼ぶ」>「オヤツをもらえると思って手に注目する」、この
状態で、30秒くらい待ってみて下さい。(30秒って結構長いですよ。)
その間にオヤツを持っている手を見つつ、目線だけでもチラっと顔を見たら
すかさずオヤツをあげて褒めまくりましょう。
 いつまでも手をじーっと見たまま動かなくなったら、手を後ろに隠すのも
良いです。「あれ、手がなくなっちゃたけど、どこへいったの? オヤツは
もらえるの?」と人の顔を見たらしめたものです。すかさずオヤツをあげて
「○○ちゃん、やったね!あなたは大天才よ〜」と褒めちぎりましょう。
ついでにいっぱい触ってあげるのも良いでしょう。
 もし、隠した手を追って人の後ろに回ったら、「犬の目線の延長線上に自
分の顔がくるように」をもう少しやりましょう。犬は「名前を呼ばれた後、
待っていれば必ずオヤツがもらえる」ことを理解します。(この文章は私達
のメンバーを考えて、ラブ&ゴルだけを対象にしています。ここで書かれて
いる「犬」とは「ラブ&ゴル」のことです。念のため。)
 そして「犬は待っている時に考える」のです。


ここまでは前準備です。完璧に出来た方が良いですが、きっちり顔を見なく
ても、ちらっと見るくらいでも先に進みましょう。
逆に完璧に出来たとしても、この練習はいつまでもやりましょう。名前は
コミニケーションの基本です。(>自分)

とりあえず、ここまで。

        




99/10/1     名前2        弓削

(目的)名前を呼んだら、こちらを見るようにする。
 前の発言では「名前に反応する」こと、そして「名前を呼ばれて待って
いれば必ずオヤツがもらえる」ことをやってみました。
 今度は少し、実用的な状態でやってみましょう。

(お散歩スタイルで)
 首輪を付けて、リードを付けてやってみましょう。

 これから何かをやるぞ!、という感じを察しられないように、お散歩中に
さり気なくやってみましょう。お散歩中、犬がボーッと歩いている時、何か
に気を取られている時、とにかくこちらに注意を向けていない時に行います。

 そんな時に名前を一回だけ呼びます。
   こちらを見たら大成功です。
   すぐに褒めながらオヤツをあげましょう。そしてまた褒めましょう。
  そしてまたオヤツをあげて褒めましょう。ついでに遊んであげると
  もっと良いでしょう。

 もし、こちらを見なかったら?
 「ア゛ッ!」という。
   こちらを見たら成功です。
   すぐに褒めてあげましょう。そして「すぐに振り向いてくれなかった
  らこれだけね〜、」とちょっともったいぶりながら、オヤツをもったい
  ぶった量をあげましょう。

 「ア゛ッ!」といっても振り向かなかったら?
 リードを軽くピンっと犬が気づく程度に引っ張りすぐにまた緩める。 (=ポップ)
   こちらを見たらOKです。
   まずとにかく褒めましょう、「いいこね〜」っと。
   ここで、もう一度名前を呼んでみましょう。

      名前に反応して顔を見たら、とっても、とっても、とっっっても
     褒めてあげて下さい。もちろん、オヤツもあげましょう。
      そして、そのお散歩中に出来るだけ早く、もう一度名前を呼んで
     見て下さい。犬がこちらに注意を向けていない時に。
     (復習は犬が覚えているうちにやると良いですが、犬が飽きない
     ように、回数は極力減らしましょう。)

     ※名前に反応しなかったら、前の段階に戻って下さい。


      それでも「どうもうまくいかない」(ここまで辿り着かない)と
     いう方は、以下をチェックして下さい。
         1.名前を呼び方を何通りか試してみる。
           高い楽しそうな声に反応もしますが、低いドスの
          きいたような声に反応することもあります。
           色々な声色、スピード、でやってみて下さい。

         2.褒め方はどうかな?
           犬が褒められていると感じるような雰囲気か?
           ウキウキ楽しそうか?
           心から褒めているか?

         3.オヤツのあげ方は?
           文末にも書きますが量より数です。とっても小さな
          オヤツをいっぱい用意しましょう。

         4.名前を呼び過ぎていないか?
           今までの文章をもう一度読み直して「名前を呼ぶ時」
          をチェックし直して下さい。書いてある時以外に名前を
          呼んでいませんか?


今回は、名前の他に「ポップ」というコミニケーションが出てきました。
この方法は人間同士で例えれば、名前を呼んでも振り返ってくれない相手の
肩をポンとたたくといった感じでしょう。
この方法は、なかなか便利なコミニケーション手段です。名前と一緒に
「ポップしたらこっちを見る」ことを覚えてもらうと良いでしょう。
(「名前を呼んだら、すぐにこっちを見たからその練習は出来ない」なんて
言う方は、その通り、ポップの練習は必要ありません。名前を呼べばこちら
を向いてくれるのですから。)


*オヤツについて
 オヤツは小さなものをいっぱい用意しましょう。犬が喜ぶのは、量より数
です。何回も練習できるように、そして犬の健康を考えて量は出来るだけ
控えるようにしましょう。
出来るならば、オヤツのカロリーを計算に入れてご飯の量を決めると良いで
しょう。それが出来なくとも、1日のオヤツの最大量は決めておいた方が良
いです。「今日の分はこれだけ」と小さな箱にでも入れておけば分かり易い
です。

基本的な「名前の認識」はここまでです。次は番外編。

        



99/10/3     名前3        弓削

(目的)遠くで呼んでも、こちらを見るようにする。
 今迄は犬が人のすぐ近くにいる時の練習でした。東京で暮らしている場合
ノーリードにすることはほとんどないでしょうから、前の発言のところまで
で「とりあえずOK」だと思います。
 しかしノーリードにすることが「全くない」ということもないでしょう。
そんな時のために「番外編」です。

(家の中で)
 まずは、犬が見えるところでやってみましょう。前の発言の説明同様、
犬がこちらに注意をはらっていない時に名前を呼んでみましょう。初めは
近くで。出来るようなら少しづつ距離を伸ばして。
犬が反応したら今迄書いた通り、しっかり褒めてオヤツをあげましょう。

 もしこれが出来るようであれば、犬が見えないところでやってみましょう。
犬が見えないので反応したかどうか分かりません。犬が自分のところに
来たらOKとします。もし来ないようなら、ここから先に進まずに次の挨拶へ
進んで下さい。


*目的はなんですか?
「名前」の段階で犬に解ってもらうことは、「名前を呼んだらこちらに注意
をはらうようにしてもらう」ことであって「人間の近くに来る」ことでは
ありません。人間の近くに来ることをお願いするのは、別の言葉(オイデ)
を使いますので、ここでそれが出来る必要はありません。
そうすると疑問が沸いてきませんか? 犬と距離をおいている状態でどう
やって犬を褒めるのか、しかも犬が近づいて来なくても良い、となると。
答えは簡単。犬に駆け寄って思いっきり褒めて、そしてオヤツ攻撃しましょう。
走ったついでに犬と一緒に走るのも良いかも知れませんが、ハイパーな子には
お勧めできません。


(外でやってみる)
完全にノーリードにするのは色々な意味で問題があるので、ロングリードを
使いましょう。犬を自由にしておいて名前を呼ぶ。後は前の発言と全く同じ。
ロングといえどもリードが付いているのでポップは出来ます。ただし「ア゛ッ!」
の声が聞こえるかどうかが気になります。

と練習は出来ますが、名前だけで反応しないようであれば、前の段階に
戻って下さい。最終的にはリードなどの道具に頼らず、コミニケーションを
とることを目的とします。リードやチェーンに頼っていては限界があります。
「犬を飼う」のではなく「犬と暮らす」のであれば、このように考えるのが
自然だと私は考えています。

(しつこいようですが、ここは「オイデ」の練習ではないので、ここまで
やる必要はありません。)                 弓削明久

        




名前のトレーニングのポイントは、いつまでも続けることです。
ここに書かれているように、陽性強化法を用いた場合、
名前のトレーニングは、「褒める」の基本になります。

ここでは、ご褒美=おやつ ですが、ご褒美は、おやつである
必要はありません。犬が褒められたと感じられるものであれば
なんでもいいのです。

日常の名前のトレーニングで「褒める」が出来ていなければ、
他のトレーニングをやっても成果をあげることは出来ないでしょう。



ちなみに「褒美」の元の意味は「褒める」です。

00.1.8



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