Mさん と Jちゃん  11

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今まで幾つかのメールが行き来していて、読んでいる方は、とても疲れたと思います。今回はそれを1本にしました。

MさんとJちゃんは、「名前」というトレーニングをきっかけに、犬とのコミュニケーションに必要な、そしてとても大事な、もう一つのことについて考え始めます。そう、それは教えてもらっただけで、出来るものではなく、自分達で考えなければなりません。
何故なら、MさんはMさんであり、JちゃんはJちゃんなのです。お互いの個性、人格があってのコミュニケーションです。そうであるなら、「自分について考え(見直し)て、相手のことも考える」ことが必要です。当たり前のことを理屈っぽく言っているだけに感じるかもしれません。それなら簡単に言いましょう。それを一言で表現するなら「思いやり」ということだと思います。


・「名前」、そしてもう一つは?

もう一つは何でしょう?
思いやりをもって、犬にアプローチする何かです。逆にいえば、思いやりがなければ、上手くいかないことが多い何かです。
何故、私は教えないのでしょうか? それは、その言葉を聞けば「な〜んだ、そんなことか、」と思い、そして、その言葉が頭に残り、その行為に思いやりが必要であることを忘れてしまうからです。その行為は簡単なことではありません。しかし、思いやりをもって行えば、効果的に、そしてお互いが楽しく、目的を達成することが出来るでしょう。

それを体験してもらい、言葉(文字)からの理解ではなく、体験から理解してもらい、記憶ではく、意識に焼き付けて欲しいと願っています。





99/10/3      仕切り直し     弓削 

仕切り直し、ということで3つのメールの返事を1本にしたいと思います。
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まずは環境を変えたこと、とても良かったみたいで何よりです。
でも本当は、もっともっと一緒に居てあげて、どんどんお互いを
理解する時期なんです。「社会化期」なんて難しい言葉を使う
人もいますが、それをちゃんと説明すると、自己とそれ以外の
繋がり方の基礎を形成する時期ということです。

できるだけ多くの時間、多くの種類のコミュニケーションを持ってください。
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皮膚の件は、大したことがなさそうで良かったですね。
うーにーは今日もカキカキしていました。目も耳も痒そうに
していました。そうなると旅行へ連れて行った時も、何かと
気を遣います。薬も持って歩かなければなりません。
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環境を変えたことで、トイレが上手くいったということは、言い方を
返れば「Mさんが失敗をさせるよな環境にしていた」ということです
よ。(<ちょっときつい言い方すみません。でも、大事なことです。)
どのような環境が犬に適しているか、ということは、近所の先輩飼い主、
親犬や兄弟犬の飼い主から聞くのが普通ですが、日本ではその程度の
ことができないような、犬の流通形態が一般的になっていることは残念
としか言いようがありません。

食糞もお散歩で減ったということで、とりあえず多少失敗しても
見守ってあげましょう。
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・MさんとJちゃんのコミュニケーションについて

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現段階では、Jちゃんは、Mさんからのコミュニケーションを
どう受け止めるべきか、考えが定まっていないようです。これは月齢
からして当然です。犬は人間に比べて「赤ん坊らしさ」がありません
から、子犬を「小さな成犬」と勘違いしがちです。善いも悪いも分から
ない赤ちゃんだということを忘れないで下さい。

ですからあまりトレーニングをやること、それを披露することは、
とても酷なことです。「名前」の話を出しましたが、アイコンタクトも
やり過ぎないように気をつけて下さい。この時期にやり過ぎると、
後々上手にコミュニケーションを取れない犬になってしまいます。

この時期、トレーニングは1日5分、多くても10分を目安にして
下さい。それよりもコミュニケーションのキャッチボールをどんどん
やって、お互いの感受性を高めて下さい。また、コミュニケーション
のキャッチボールの最中に、コマンドで行う動作を自分からすること
もあります。それを覚えておけば、トレーニングをより効果的に行う
ことが出来るでしょう。

       −−−−−−−−
さて、これからは犬がコマンドを覚えるまでの「一般論」の話を書きます。

一番単純なのは、犬が行う行為にコマンドをつけて、そして褒めると
いうものです。よく使われる例は、無駄吠えの矯正です。犬が吠える時
に「吠えろ!」といい、そして褒める。これでタイミングさえ間違わな
ければこのコマンドを覚え、コマンドのない時は吠えることが減ると
いう訳です。

Mさんは、犬が褒められたら、それが分かるまでに何度もその行為
を行わなければならないように考えている様ですが、褒められたと
分かれば、その時点でその行為を繰り返します。叱ることも同様に
上手に叱れれば、その時限り、もう2度としないようになります。

          −−−
しかし、多くの人が上手に出来ないのが、まず犬の表情を読むこと。
つまり、今までのMさんや陽性強化法を誤解している例に出した
飼い主さんのように、犬の表情を見ずに「こうすれば犬は喜ぶに決まっ
ている」という思い込みから、「飼い主は、褒めているつもり」VS
「犬は、何なんだろうこの行為は、と感じる」となってしまいます。

           −
Mさんは、先のメールの中で陽性強化法を誤解している飼い主
さんの件について「なにか嫌な事を経験させてしまったのですか?」
と質問されていますが、私はこう考えます。
「犬は常にポジティブにものを考える。可能な限り大好きな飼い主
さんからの働きかけは受け容れる。その犬が特定のタイミングで
離れていく。それはそのタイミングに常に嫌なことがあった。」
その行動とは、犬に痛みが伴う、著しく精神的な苦痛が伴う、など
とは見えなくても、犬がその様に行動していることは「嫌だ!」と
言っていることなんです。それ以上何も考える必要ありません。

           −

もう1つ上手にできないのがタイミング。叱ることはタイミングを
間違えると、そのフォローが面倒なことになります。私も1度だけ
叱るタイミングを間違えただけで、1つのコマンドを出来なくした
(2度とやらなくなった)ことがあります。これが、陰性強化法を
一般に薦めない理由です。
同様に陽性強化法でもタイミングのとりかたが上手・下手で犬への
伝わり方が大きく違い、結果として犬がコマンドを覚える速さが
桁違いになるのです。(そんなこともあって、通信での相談は限界
があります。)


          −−−
ここで、一般的に薦めることが出来る(致命的な失敗が少ない)
トレーニングの方法の考え方を書こうと思いましたが、時間がないの
で後日に譲ります。

ここで一番分かって欲しいのは、褒めたことが本当に伝われば、
犬は褒められた行動を、その場で繰り返すか、ちょっとした
きっかけで繰り返し易くなるということです。
もし、そうでなければ「褒められた」と感じていないと思って
よいです。褒め方・タイミングを再チェックして下さい。


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・話は変わって、散歩について、。

まず、お散歩に行く前に排泄(特にオシッコ)は済ませてから行くの
のが理想です。旅行を考えてみて下さい。お出かけ前に排泄を済ませ
、お出かけ先では、出るものがなければ安心ですよね。
Mさんが書かれているように、自宅の庭で排泄をしてから散歩に
でるのが良いでしょう。しかし、Jちゃんの現在の月齢を考え
ると、そのトレーニングをするのは無理です。Mさんとしては、今
のところ、このことを頭にいれておくくらいでいいでしょう。

          −−−

散歩に出たら、クンクン。
一番いけないのは、電柱や木、壁など犬がオシッコをかけるであろう
所の臭いを嗅いでいる時です。地面の臭いを嗅いでいるのは、いけない
とも言いにくいのですが、幾つか不都合な点があります。
1.拾い食い・・・毒餌なんてこともありますから注意して下さい
2.周りに注意がいかない・・・うーにーはこれで車に轢かれそうに
  なりました。(一緒に散歩していた私の不注意が一番いけないの
  ですが、、)
3.人を無視するようになる
そんな訳で、クンクンは止めさせて下さい。

ちなみに、それを止めさせた時に
》ふんばって「動きたくない!」って感じの態度をします。
とのことですが、これは
「いつもいいって、いっているのに何で今だけ駄目なの?」と
Mさんを試しているわけです。つまり「いつでも嗅いでいい」
と思い込んでいる可能性があります。

止めさせる時に
》足が短いのでなかなか大変です、、
と書いてありますが、これをそういう犬種を選んでしまったのだから
覚悟して下さいとしか言えません。
ちなみにプロのトレーナーは、小型犬を預かると、信頼関係が築ける
までアヒル歩きで付き合います。で、腰を悪くする人も少なくあり
ません。

          −−−

誰かと会ったら。
           −
ガウガウ、がんがん向かってくる犬、制御の全く効いていない犬

Mさんもどうしていいか分からないし、怖いでしょう。
でも、Jちゃんはどうですか? とっても恐いかも知れ
ません。何も分からないから恐くないかも知れません。しかし
その犬に受けた仕打ちによって、犬大嫌い(ならいいです。
犬に対して攻撃的になることもあります)になるかもしれません。
怪我をするかも、それだけでは済まないかも、知れません。
そういう状況ですから「恐い」なんてことは言わないで下さい。
親は子供を常に守らなければなりません。Jちゃんの身も
自分の身も守れないと感じたら、Jちゃんと逃げるしかない
でしょう。相手がノーリードだったら、Mさんが戦うしかありま
せん。(これも相手の犬との挨拶の一種だと私は考えています。)
これもJちゃんに対する責任です。

           −
普通の飼い主さんが、落ち着いた犬を連れている場合

人間の挨拶をした後、犬同士は挨拶をさせる必要はありません。
無理に止めさせる必要もありませんが、どこで不躾な挨拶をされるか
分からないので、相手の犬を見て判断して下さい。
日本人の書いた本の中で「犬の挨拶とは、顔をつけ、お尻を嗅ぎ
あう」などと書かれているものがありますが、これほど密な挨拶
は、ほとんど必要ありません。犬は5m離れていても臭いで相手と
挨拶できます。密な挨拶は単純な挨拶以上の意味を持ち、時に
喧嘩になることもあります。
犬同士が遊ぶ、というのは挨拶とは別な話になります。


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・幾つか、個別の話

   −−−
日光浴の時間
健康を害さない限り、できるだけ長くです。
日光浴する場所が、公道などとどのように接しているかがしつけ上
の問題になることもありますので、ご注意下さい。

   −−−
マウントは雄の性行動?
これは違います。雌でも支配性の強い犬は行います。
(腰を振ります)

   −−−
解除のコマンド

1.他人の言葉でも解除されてしまうか、
    その可能性は大です

2.通常「解除」のコマンドは何を使うか、
    「OK」「終わり」「いいよ」なんでもいいです。
  「通常」を考えてないで欲しいです。2人だけの
  秘密の言葉が自然にできるくらいになって欲しいもの
  です。
  ちなみに私とうーにーの間での解除のコマンドを
  お教えしても「何で?」と首をひねるような言葉です。

3.コマンドの意味は換えられるか
    正確に表現するなら、何歳になっても新しい
    コマンドを覚えさせることは出来ます。

4.(解除の反対として)常にコマンドの前には「J」
  と注目させるようにすればいいのですか?
    まず答えは「当然です。」
    コマンドのことをお教えするまでにいかない(他に
    悩んでいることが多いようなので、そこまでいかない)
    と思っていたので説明していませんが、犬が人間から
    コマンドを受ける場合、一番分かり易いのは、ボディー
    ランゲージ(=人間の動き)です。
    声(言葉)でのコマンドは犬には難解です。犬の行動学を
    よく勉強している動物愛護団体の人がいれば声のコマンド
    だけで特定の行為を覚えさせようとするのを見れば、虐待
    というかも知れません。

   −−−
確実に進む

》気持ちはとても分かりますが、焦らず確実に進まないと、人を
》無視することが当たり前、さらには何に対しても中途半端な
》ことをする犬になってしまいます。

これは、挨拶に限りません。完璧(というのはオーバーですが、
人間に注目していれば必ず行うくらいのことと思って下さい)に
できないコマンドは、実践では使わないで下さい。
そうなると挨拶は力で止めるしかなくりそうですね。しかしその
方法でも犬はいきなり相手の所に行ってはいけないのだな、と
学習するものです。(中途半端にやらなければ、)

   −−−
噛み噛みモードの時に、「囃し立て」から「無視モード」へ

Mさんが書いているように「分かり易い」というのもあるで
しょう。しかし他に大事なことがあります。
噛み噛みモードの時の形相は確かに危ないものがあります。
それを人間がそのままに受け取って、そのままに対応すると、
犬も「この後は人間を怖がらせなければ、ならないのだな、」と
思い込んでしまう可能性があります。

この駆け引きがちゃんとできれば、犬が興奮しても、すぐに
落ち着かすことが出来るようになります。(ただし、これに
ついては、犬種、血統によるところも大きいので、また、前述
のタイミングの問題もありますから、Mさんが出来ないと
判断したらすぐに止めて下さい。)

   −−−
「この時はいいけど、この時はダメ」を犬には期待出来ないか?

できないと考えて下さい。
もし、どうしても出来ない時は、人間に説明するように、
その時々で何が違うのかを犬に説明して下さい。(分かり易い
違いを探してあげる。)
それは出来ないのが普通です。それでは、その様なケースの
対処法はというと「とりあえず禁止」、「許される時だけコマンド
により、行わせる」というのが一般的です。
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以上で3つのメールに書かれている疑問点は、全て書かれていると
思います。まず、それをチェックして下さい。




99/10/4     「名前」の進捗報告        Mさん

とても解りやすい説明でした、感謝いたします。
ただここでも私の悪い癖が原因だったようです。
キーワードは「確実」と「継続」の様ですね。
私は「せっかち」みたいなので、
折角の学習を完全なるものにしてなかったようです。

まず、「むやみに名前を呼ばない」を徹底しました。
・「名前1」
似たような事を前にやっていました。
早速、金曜日の夜に10分ほどトレーニングした所、
ほぼ完ぺきにできるようになりました。
・「名前2」
次の日の朝、寝起きにに数回復習をしました。
ここでもできました。
で、お散歩にて実践!
ほとんどできるのですが、ものすごくなにかに
集中や警戒している時にはできませんでした。
たとえば、人間に「ご挨拶」しようとおしりを
ふりふり、トラックなどの轟音時などです。
これは地道にトレーニングしていきたいと思います。
この時点では、家の中ではおもちゃで遊んでいようが
こちらに注目します。
できない条件があったのは、とても疲れて眠たくて
テンションが下がりまくっていた時は、だめでした。
まだまだ完全ではないですね。
「継続」します。

・「名前3」
日曜日にノーリードで芝生の上をおもいっきり遊ば
せる機会があり、そこでためそうと思ったのですが、
これを読んでおらず、(躾の)失敗を恐れやめました。
(このせいで疲れたみたいです。。)
次回に行ってみます。

お散歩時の「ポップ」は臭い取りに効果大でした。
お散歩のペースもあがり、凛々と歩くようになった
気もします。

土曜日に獣医さんに行ってきました。
「皮膚は奇麗になった」
「耳も目も正常」
「しかし、アレルギーの兆候はある」
「フードをかえた方がいいだろう」
ということでヒルズのd/dをしばらく
食べさせるようにいわれ、(アレルゲンを
フードと同定するため?)その後は
今のフードをやめてサイエンスダイエット
なんかどう?といわれました。
とはいえ、フードを変える事には否定的でした。

ショップに行ってフードを調べてみると、
いろいろあり、アレルギーの事を相談すると
「獣医さんの薦めるフードで治るとは思えない」
「獣医さんはフードで治そうとはしないから。。」
等を言ってました。
たしかにアレルギー用のフードを扱っていました。
実績(?)もあるらしいです。

Jを見ているとほとんど湿しん等なく、
ただ痒みが少々あるので、これはフードに起因
するのかもとも思います。
今は旧フードとヒルズを混ぜて与え、無くなり次第
ヒルズオンリーにして様子をみてみようと思ってます。
その後は、アボダームのアレルギー用にと考えております。
こればかりは食べさせてみないと解らないですよね?

姉の所に顔をだした時に、
「だんだん、あんたの顔に似てきた!」
といわれました。
これは素直に喜んでいいのですよね?

        






「確実」と「継続」。いい言葉に辿り着きましたね。
それを体験を通して理解できたことが、これからの
二人の関係に大きくプラスになることでしょう。


「叱る」という話が出てきましたが、体罰の話を少々

三が日だったと思います。テレビで犬に体罰を与えている
場面が映されていました。人間の子供の顔に怪我を負わせた
犬に対するものです。
その人は、なかなか手馴れたもので、犬への配慮がある
体罰でした。

私の感想は
「体罰って大変だな、ここに映されているのは、
1つの体罰のほんの一部であり、全体を与え終わるまで
気が抜けない。なんと面倒なことか、」

体罰を与える人間に必要なことは、
犬に対すと知識、経験、 犬からの信頼、
体罰が終わるまでの集中力・体力の持続、
終わりのタイミングを見極める目、
万が一のことを考えての覚悟と処置の用意、
失敗に終わったときのフォローの用意、
見ている人、犬への正当性のアピール、、、、
まだまだ、ありそうです。

考えただけで疲れてしまいそうです、、、、。

00.1.14



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