■ 狂犬病予防法第十八条の二が追加された影響 ■
昭和29年の狂犬病予防法改正時に「(けい留されていない犬の薬殺)第十八条の二」が追加されました。説明ページはこちら。
その条文の中に以下の一文がある。
狂犬病予防法
(けい留されていない犬の薬殺)
第十八条の二 (略)
2 前項の規定による薬殺及び住民に対する周知の方法は、政令で定める。
(引用元)狂犬病予防法の一部を改正する法律・御署名原本・昭和二十九年・法律第八〇号
法律で「犬の薬殺」が規定され(日常的な言葉で言えば)「詳しいことは政令(施行令)で定める」としました。
施行令の該当部分を説明したページはこちら。
狂犬病予防法施行令
(薬殺の方法)
第六条 (略)
2 毒えさに用いる薬品の種類は、厚生省令で定める。
(略)
(引用元)狂犬病予防法施行令の一部を改正する政令・御署名原本・昭和二十九年・政令第一六六号
ややこしいですが、法律レベルでは「詳しいことは政令(施行令)で」とし、政令(施行令)では「薬品の種類は、厚生省令(施行規則)で」としています。
ここまできて、やっと狂犬病予防法施行規則の条文です。
※条文の第〇条がアラビア数字になっているのは参考にしているのが(原文ではなく)個人の方が運営されているサイトからのデータだから。
第十七条を第十八条とし、第十六条の次に次の一条を加える。
(毒えさに用いる薬品の種類)
第十七条 令第六条第二項に規定する薬品は、硝酸ストリキニーネとする。
(引用元)以下より入手した画像データを見て手入力しものです
もし誤字脱字等見付けられた方がいらしたらページ末尾からご連絡しただければ幸いです
大蔵省印刷局 [編]. 官報 昭和29年(7月)-(8月) 19540700-19540800, 日本マイクロ写真 (製作), 1954. 第8261号 P.239
今までの第十七条(政令で定める市)が第十八条になり、この条文が第十七条に入りました。
書いてあることは、「今回の改正で制定された、狂犬病予防法第十八条の二にて、薬殺の方法は政令で定めるとして、施行令の第六条第二項で薬品の種類は厚生省令で定めるとされている薬品は硝酸ストリキニーネとする」。
ストレートに言えば「薬殺に使う薬品は硝酸ストリキニーネ」、これだけ。
■ 毒えさによる薬殺
このページだけを読んだ方は「毒えさなんて酷い!」と驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、この内容は今(令和六年)の狂犬病予防法にも残っています。
このことに付いては、改正法制定前(公布前?)の昭和二十九年三月二十九日にに参議院厚生委員会で議論されいます。そのことはこちらのページに書きました。
この中で、齋藤弘吉先生も「狂犬病にかかった犬は駄目です」(050・齋藤弘吉)とはっきりと否定的な意見を述べています。狂犬病に罹った犬はものを食べられないので毒えさは意味がありません。
実施した地域の(狂犬病ではない)犬を殺してしまう可能性があり、この改正前に毒えさを行った行政があり、その被害に遭った飼い主がいることもこの委員会で報告しています。
委員会の議事録はこちら。
昭和二十九年の法改正は四月三十日に公布されています。その約一ヶ月前の委員会での議論により内容が修正されることはありませんでした。
しかし、この改正には(「毒えさによる薬殺」以外にも)「犬の引取」「捕獲のために予防員に立入権を与える」「公示満了後の猶予期間を三日から一日へ」など(一般飼い主として)直感的に受け入れがたく感じるものがあったため、以下の通達がでています。
○狂犬病予防法の一部を改正する法律等の施行について (昭和二九年八月二七日)
(発衛第二五七号)
(各都道府県知事各政令市長あて厚生事務次官通達)
これは当時を理解する上で非常に重要な文書だと考えておりますので、時間が見つけて取り上げたいと考えています。
今回はしっかり理解していただきたい内容でした。
このようなこが行われないように、二度と狂犬病を日本に根付かせてはならないと、私は考えています。
次回は(先に紹介した通達にもありますが)注射済票に色を着けたこと。
通達を読んで私の認識が間違っていたことを知りました。注射済票を再交付の必要があったならしておかないと(第十八条の)「けい留されていない犬」の内、抑留対象になる可能性が高くなるらしい。
注射済票の意味に付いて改めて考える機会になりそうです。
もし内容に間違いがあることをお気づきの場合、疑問点がおありの場合等、以下の「こちらから」ご連絡いただければ幸いです。
2025.5.6 引用元変更「官報検索!」⇒「国立国会図書館のコピーサービス」
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