昭和29年公布・施行の「狂犬病予防法の一部を改正する法律」を読んでいます。
・第十八条の二(けい留されていない犬の薬殺)が追加
物騒なタイトルな条文が追加されましたが、当時としては必要な追加だったのでしょう。
以下のその条文を記載します。
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第十八条の次に次の一条を加える。
(けい留されていない犬の薬殺)
第十八条の二 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要がある場合において、前条第一項の規定による抑留を行うについて著しく困難な事情があると認めるときは、区域及び期間を定めて、予防員をして第十条の規定によるけい留の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬を薬殺させることができる。この場合において、都道府県知事は、人又は他の家畜に被害を及ぼさないように、当該区域内及びその近傍の住民に対して、けい留されていない犬を薬殺する旨を周知させなければならない。
2 前項の規定による薬殺及び住民に対する周知の方法は、政令で定める。
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原文は以下
狂犬病予防法の一部を改正する法律・御署名原本・昭和二十九年・法律第八〇号
まず改正後の第十条は以下になります。
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(公示及びけい留命令等)
第十条 都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。
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以下(これを私が手入力しました、なので間違っているかも)を参考に、今回の改正(「その発生地を中心とした半径五キロメートル以内における」を削る)内容を反映したものです。
狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号
昭和25年に狂犬病予防法が制定され、狂犬病(疑い含む、以下同じ)の犬が死んだ場合、予防員に引渡し(第十二条)、狂犬病が発生した地域では口輪や係留を命令する(第十条)ことで狂犬病発生数が減ってきました(参考)。
しかしどうしても捕獲出来ない狂犬病の犬がいたので、この条文が追加されたのだと想像しています。
その結果、この昭和29年の改正後、昭和32年の猫の発生を最後に狂犬病の発生はなくなりました。
狂犬病のない国や地域は世界的に見てもとても少なく、これだけ長年その状態を保ている国は限られています。この改正は成功したことになります。
狂犬病は人も犬も発症してしまったら助かりません(助かった例があると言われていますが、私が読んだ範囲では再現性のないものでした)。しかも苦しんで死へと至ります。
発症前に感染しているかの検査はありません。発症しない限り「狂犬病である」と診断出来ません。
人間は暴露後ワクチン接種(PEP)がありますが、犬の場合、私は聞いたことがありません(経過観察中は予防接種をしないように、と書かれたものを読んだ記憶はあります)。
狂犬病がある国では咬傷事故が起きる度にこれらのことを考える必要があり、これはペッとト暮らす人の負担になります。
やたらと噛む犬や元気がなくても口が出る犬は疑いをかけられます。「咬傷事故を起こしても予防注射済みであることを証明できればいいんでしょ?」と考える人もいると思いますが、WHOの書類でも「それでも経過観察を」となっています。
今の日本では「たぶん違う」前提で経過観察されますが、狂犬病がある国ではそうもいきません。狂犬病がない国、日本に暮らしていることが(文字通り)有難いことを実感しています。
これら諸事情考えると、このような条文も理に適っているのかもしれません。
24時間以内の届出や2週間の経過観察を耳にした方もいると思いますが、狂犬病予防法、狂犬病予防法施行令、狂犬病予防法施行規則の中には見当たりません。
東京都の場合、「東京都動物の愛護及び管理に関する条例」の(事故発生時の措置)第二十九条に、「事故発生の時から二十四時間以内に、知事に届け出なければならない」「その犬が人をかんだときは、事故発生の時から四十八時間以内に、その犬の狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない」とあります(行政よっては2週間の経過観察が明記されている場合もあります)。
もし日本が狂犬病に気を付けなければならない国になったら、これらの手続きや措置も緊迫感をもって行われるようになるのだと想像しています。
この先も「狂犬病がない国」であり続けてほしいと切に願っています。
今回取り上げた条文の 2.に「政令で定める」とあります。
この昭和29年の法改正のページを作り終えたら、施行令、施行規則の改正のページ作りとなりそうです。
(次回)
あともう少し。次の条文と附則で終わりです。
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