タイの思い出  その3

2002.08  Kimmy さん より


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私は鶏肉や鳥の骨付き腿肉を調味料に漬け込んで炭火で焼いた
「ガイヤーン」というタイ料理が大好きです。
島をフラフラ歩きながら好みの味のお店(屋台?)を見つけては、
毎日昼食用に買いに行っていました。
行きつけのお店(屋台?)が出来て毎日通うと、オバチャンはとっても
美味しい「焼きとうもろこし(塩水を塗って炭火で焼いたもの)」
をおまけにつけてくれたりしていて幸せな毎日でした。
これに、タイのシンハービールかアマリットビールを用意すれば、
楽園の午後の準備ができます。

そんなある日、私の後から犬が猛ダッシュをして追いかけて来ました。
私は「アナタとは初対面だし、アナタには何にもしてないぢゃないのよぉ〜。」
と思いながら知らん振りをしてバンガローに戻りました。

怠惰な昼食と読書と昼寝の時間!これは至福の時です。

「食べ物やそのゴミはバンガローの中には置かない方が良い」と
聞いていたのでテラスのベンチに置きに行こうとドアを空けると・・・
さっきの猛ダッシュ犬がお座り状態でいるではないですか。

「全部食べちゃったよ」と言っても相手はニコニコの笑顔。
「でも、これは焼いた鳥の骨だしアナタの体に悪いからお外に行きなさいね」
と困った顔で私が日本語で話すと「残念です〜」とでも言いたげにその子は
去っていきました。

「テラスのゴミは後でかたずけようかなぁ〜」
バンガローの中で残りのビールを飲みながら
ぼんやりと考えていると外でなにやら気配がします。
ドアの外には・・・さっきの猛ダッシュ君がいました。

テラスに置いていたゴミを荒さずに彼はそこにいました。

私は骨を持ってバンガローのオーナーに会いに行きました。
「犬が欲しがるんだけどどうしよう。これは日本では犬にあげないよ。」
と言うとバンガローのオーナーさんは
「大丈夫。あいつらはいつもそうやって生きてきたから」
「本当に大丈夫なの?」
「この辺の犬は何でも食うさ」
「・・・・」

バンガローに戻り、ケント(仮名)と話をしました。
「お腹が空いているのね。本当に大丈夫なの?
私はとっても心配だよ。でもどうしても欲しいならあげるよ。でも一本だけだよ。」
私の気持ちが彼に通じたのかどうかは未だに謎です。

祈るような気持ちで一本を差し出しました。
ケント(仮名)は私の手から骨を優しく受け取り食べ始めました。
私は気が気ではありませんでした。
「ケント(仮名)は明日、無事に姿を現すのか?」

翌日、ケント(仮名)は元気な姿を現しました。
私が島に滞在中、ケント(仮名)と私はつかず離れずの状態で共に過ごしました。
肉や野菜や果物、色々な食べ物を分かち合いました。

夜、オープンレストランに行くときも彼はついて来ました。
私は出来るだけ外に近い場所をオーダーし、彼は店には入らず私が見えるところで
安心したように微笑んで待っていました。


私はケント(仮名)に何も言いませんでした。
でもケント(仮名)は私が「テラスに出したゴミ類は勝手に漁らない。」
というルールを守ってくれました。
側にいてくれるだけで嬉しい存在でした。

その島を離れるのが辛かった理由にはケント(仮名)の存在がありました。
今思うと、ケント(仮名)は私に「犬」を教えてくれた「先生」だったのかもしれません。

(追記:バンガローのオーナーの言葉が気になり、そこの飼い犬ではない犬が集まる
    場所(お店)で「この辺の犬は何でも食う」という事について尋ねました。
    当時の私のリサーチ(?)の結果、日本と同様とでも言いましょうか・・・
    タイでも仔犬が生まれれば「可愛い」と喜んで連れて帰る方は多いそうです。
    ですが、その犬達が大きくなると当然エサ代は嵩みます。
    これに困った飼い主は「お外の犬」=オフリード→「外で適当に食ってこい」と
    外に放り出してしまうケースが多いようでした。)

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