Kさん と Nちゃん  42

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■ 知らないことを理解する ■

「犬とは、こうである」という考えを誰でももっていると思います。
もっているから犬との生活をスムースに過ごすことが出来る場合と、
その逆とがあります。
後者の場合は、その考えが間違っていることに気が付かねばなりません。
そして、より正しいことを知り、理解し、犬にその知識をもって接し、経験し、
試行錯誤を繰り返し、自分と自分の犬との関係を築いていかねばなりません。

正しいこと知ることができても、それは一般論であり、また、それは知識だけで
行動そのものではありません。犬は、人の行動をコミュニケーションとして
受け取ります。そして、犬なりの答えを行動で返します。
今までと違う対応をされた場合「えっ?、何がいいたいの?、私はどうすれば
いいの?」ということも行動で聞いてきます。この時、多くの飼い主さんは、
ここで躓きます。

本当の意味で犬に付いて知るということは、とても手間隙が掛かることです。
実行する前には、充分な下調べが必要です。多くの情報を集めなければなり
ません。そのために「知らないことを聞く」習慣を身につけておきましょう。

恥ずかしいと感じることもあるでしょう。勇気を出して聞いてみたけど、相手の
言っていることがさっぱり分からないこともあるでしょう。時には相手の気分を
害してしまうこともあるでしょう。こちらは、真面目に聞いているのに「おちょくって
いるのか!」と怒られてしまうこともあるでしょう。


お気付きになりましたか?
犬も同じ経験を日々しているのです。犬の気持ちを理解する上で、つまり、同じ
経験をするという意味で、多くの人に色々なことを聞くという行為そのものが、
役に立つということも覚えておいてください。
 

03.10.04   家で様子を見ることになりました。     Kさん

夕方電話があり、食欲もあり元気なので、いったん退院させて
様子をみることにしようということになりました。
ご飯は勢いよく食べているし、排便も今朝あったそうです。
夕方6時ごろに引取りをしてきました。

家へ帰ってご飯と胃薬を与えると、すぐにウンチをしました。
中に容器は見つかりませんでした。その後はすぐにハウスに戻り
今もぐっすり眠っています。
帰りの車の中でもすぐに大人しくなってましたので、きっと疲れて
いたのでしょう。

まだ安心はできないものの、N が帰ってきただけでこんなに気
持ちが変わるものかと自分でも驚いています。沈んでいた気持ちが
少し浮いてきたのが分かるし、おしゃべりも増えるし・・・。


セカンドオピニオンについても読ませていただきました。
私も自分がいっぱいいっぱいで、そこまで考えが及ばなかった
のは事実です。いろいろ思う所はありますが、そのような見方も
していかなくてはならないと思います。

もうひとつのメールも一度読ませていただきました。
またゆっくりとお返事書かせていただきます。


03.10.05   RE:家で様子を見ることになりました。    弓削

一安心というところでしょうか。
食べれて、飲めて、排便が出来ていれば、すぐに最悪の
事態になるということはないはずです。

容器がいつ出るかですが、何年も出ないことはままあり
ます。仲のいいラブは、1年以上お腹に入れておくことは
何度もしています。一度「大丈夫かな?」と思った時は、
いくら食べても痩せてゆくという状態になったことがあり
ました。いつもアバラが見えていました。でも犬は元気
なので様子をみていました。そしてある時、何年か前に
飲み込んだ軍手が出てきました。それからは、食べれば
太るようになりました。


獣医さんという商売は、随分と世に誤解されていると感じます。
一生懸命やれば、お金になりません。そうなれば、当然、開業
もできません。獣医学も日進月歩です。勉強もしなければなり
ません。もちろん、目の前の患畜の処置もしなければなりま
せん。そして、飼い主さんへの説明も、。
どう考えても、まともに出来る仕事には思えません。寝る時間
なんてあるはずもありません。動物が好きで獣医になっても
動物と暮らす時間もありません。

ちなみに、上記のラブの家には獣医学部に通うお嬢さんが
いらっしゃいますが「獣医になるのは不安がある」と言って
います。


セカンドオピニンについてですが、現在、N ちゃんがお世話に
なっている病院がどこなのか分かりませんので、的を外した説明
になってしまうかも知れませんが、一般論としてこんなことが
言われています。

外科手術をやらない、または本音はやりたくない病院は少なく
ありません。日常的にお世話になる病院は、このような病院で
充分で、もしものことを考えて、外科を日常的に行っている
病院に顔つなぎ程度に通って「普通の状態」を見てもらっておく。
ただし、外科を日常的に行っている先生の多くは(命に関わる
ことですから)説明が難しくなりがちです。そのような先生と
お話しをする場合は、こちらも充分に勉強をするように心がけ
ましょう。

結果として、日常的にかかっている内科の先生がかかりつけの
先生になり、顔つなぎ程度の外科の先生からセカンドオピニン
を受けるということになります。


最後に「もし私が K さんの立場だったら」。

食べ物・飲み物を受け付けなくなった時点で、先生に無理言って
手術してもらったと思います。いつまでも「どこにあるのだろう。
いつ出てくるのだろう。もしかして腸を傷つけて腹膜炎になる
かも。」と心配しなくていいからです。
もちろん、N ちゃんが老犬だったら話しは別ですけどね。

これを読んでお気づきでしょうか。今の日本の獣医さんの最大の
苦悩が何であるか。


では、いつものメールのご返事をゆっくりお待ちしています。


03.10.14   まだ出てきません。       Kさん

こんにちは。
毎日毎日ウンチを調べていますが、まだ出てきていません。
N は元気で食欲もあり、長期戦になりそうな気配です。

N の薬をもらいに行ったとき、誤飲してしまったフェレットが来たとこ
ろでした。その子は吐き続けているのですぐに手術とのこと。レントゲ
ンも見せてもらいましたが、はっきりと飲み込んだ耳栓が映っていまし
た。

今日、お薬をもらいに病院に行ってきましたが、暫くはこのまま様子を
みることになりました。

> 食べ物・飲み物を受け付けなくなった時点で、先生に無理言って
> 手術してもらったと思います。つまでも「どこにあるのだろう。
> いつ出てくるのだろう。もしかして腸を傷つけて腹膜炎になる
> かも。」と心配しなくていいからです。
> もちろん、N ちゃんが老犬だったら話しは別ですけどね。

そこは私も迷ったのですが、食べ物を全く受け付けなくなった事はなか
ったし、嘔吐が続くこともなかったので(嘔吐の処置をした時以外は)
先生の判断に任せたのです。
翌朝吐いたのも、前日の処置の効き目が残っていたのかもしれないと
のことだったので、入院で経過を見てもらうことになったのです。

メールでは説明が不十分で、より心配をかけてしまったようで申し訳
なく思っています。
獣医さんのことはあまり知らない世界のことだったので、理解しないま
まに批判的な事ばかり考えてしまったのかもしれません。

今の N は普段と変わらず元気です。お腹の中に異物が入っているな
んて時々忘れてしまいそうになるほど。
でも、その件以来すこしあまえんぼうになったような・・・。

経過報告でした。
今度のメールでいい知らせを書けるといいんですけど。



03.10.16   RE:まだ出てきません。        弓削

今回のメールをもらって、あらためて一番初めのメールを読み直した
のですが、誤飲して(病院で処置をする前は) N ちゃんは、元気
だったのでしょうか。もし、そうだとすれば、何も気にすることは
ないと思います。

食べた物が毒物であるとか、刺さりそうということは、別な話しと
して、腸が詰まるということを心配するなら、元気なうちは気にする
ことはないです。
以前にも書きましたが、うーにーも石を詰まらせたことがあります。
詰まっただけで、食べ物も水も受け付けなくなります。そして具合が
悪くなります。この時点で手術の判断をするべきなのですが、偶然
にも、体を揺さぶったら出て、その後はとても元気でした。
詰まれば(=腸が腐り始めれば)、体調で分かります。体調が悪く
なったことは(催吐したとき以外)なかったことを考えれば、もしか
したら誤飲していないのかもしれません。また、クチャクチャした
のであれば、ある程度小さくバラバラになって、もう出ているのかも
しれません。

可能性として、バラバラになって尖った破片がどこかに留まって
いて、それが動き出し、刺さるということは考えられます。当分の
間、それを気にすることは負担になると思いますが、可能性がある
わけですから、充分に気をつけてあげてください。


獣医さんの世界は、悲惨といってもいいと思います。本当にいい
獣医さんになれる先生は、幾つかの好条件が重ならなければなれ
ないのが現状です。とにかく日々の仕事に追われています。それ
なのに飼い主さんは、知識や経験を求めます。私は充分に説明
していただいたとき、単純にその時給や設備のことを考えて、
「本当はもっとお金を支払わなければならないな」と思うことが
しばしばあります。しかし、多くの飼い主さんは、多くの説明と
大きな成果を求め、支払いは最小限、ときにそれ以下にしようと
する人もいます。保険がきかないのですから、気持ちは分かり
ますが、やっていただいた内容を冷静に考えれば、それなりの
支払いはするべきです。

セカンド・オピニオンという言葉が出てきましたが、私は、その
ような考えを持っていません。ある病気に対して、主治医を決め
たら、その先生ととことん話しをして、意見が合わないと思った
ら、別の先生を探します。
以前のメールにも書きましたが、病気になってから、いきなり
飛び込んでいって「治してください」というのは、問診のできない
動物を扱う獣医さんにとってとても責任の重い仕事になります。
そのような仕事をするのに、二股かけられるようなことをされ
たら(充分な報酬があればいいのかもしれませんが、それは現実的
にあり得ないでしょうから)親身に診る気になれない(本心として
断りたい)のだと思います。


》でも、その件以来すこしあまえんぼうになったような・・・。

知らず知らずのうちに、甘やかしているのでは?、でも悪い子に
なっていないのなら、それはいい甘やかし方だと思います。
分別のある甘えん坊で、いいと思いますよ。


動物もセカンド・オピニオンという考えが出てきた昨今ですが、私の考えは
本文中に書いた通りです。
それが必要になる時は、大事になる可能性になることがほとんどであり、
緊急を要するケースも多いことを考えれば、納得していただけると思います。

犬の体は、人間よりも多種多様です。犬と云う動物は、動物の中でもとても特殊です。
動物として一種でありながら、多様な形態をしています。これは「犬種」という意味でも
そうであるし、血統でもそうです。さらに個体でもそれを感じることがあります。
同じ犬種でありながら、並べてみると「ホントに同じ犬種?」と感じてしまうこともあります。

さらに、犬は本人に問診が出来ないということも、獣医師の負担になります。
また、獣学の発達により、検査の方法、結果の見方に幅が出てきていることも
(検査結果を持ち込むことになる)セカンド・オピニオンを難しくさせる原因の一つに
なっているのではないでしょうか。

あくまでも個人的な考えですが、セカンド・オピニオンを求めるのなら、日常から
(言葉が悪いですが)二股をかけるようなことをするか、そのような考えを持っていることを、
先生に伝え、先生から別の先生を紹介していただくのがいいのではないでしょうか。


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