3月16日(水)(その2)
一通り溜め息をついた私達はそのまま石垣沿いを歩いて海側へ。海が見えるところまで来たら足がすくんでしまった。すごい断崖絶壁なのだ。30mくらいあるだろうか。(怖くてよく下が見ることが出来ず、高さがどれくらいかよく分からない。)ここはダンヌ浜から見上げることが出来る高い岩場だ。ここまで北牧場が続いていたとは知らなかった。ただ、馬や牛はあまり来ないようで糞はほとんどなかった。
岩場の先の方まで進んでいったが最後の5mくらいは行くのをやめた。そこまではへっぴり腰になりながらも、岩につかまりながらどうにか進んだが、ここはつかまる岩もない岩場の先端。そんな僕を後目にOS君は、ひょいひょい歩いて行く。彼は昔、山岳部だったそうで高いところは平気なんだそうだ。彼はともかく、僕はダメだった。そんな僕に「普通の所と思って歩けばいいんですよ。」と言ってはくれるものの、そうは簡単にいかない。そして絶壁を見おろしながら、彼は独り言を言っていた。「こんな人の来ない所、釣りしたら釣れるだろうー」と、余裕である。
ここは北牧場の西の端。その断崖の近くを通りながら東へと向かう。遠く正面には、北牧場の東の端、空港が見える。
何頭かの牛を遠巻きに見ながら進んで行くと、少しアップダウンのある所に来た。所々に穴が空いている。サンゴで出来たこの島ではよくあることだ。穴に気を取られていた僕がふと顔を上げると、牧場はそこからなだらかな下りになっていた。空港も見える。牛や馬をそこら中にちりばめた様だった。遠くに牧場の関係者だろうか、人が見えた。何とも言えない南国の緑の大地に茶色い生き物達がゆっくりと蠢いていた。
北には海、西には僕とOS君、空にも悠々と雲が浮いている。それに対して、東には空港、南は道路とその向こうは造成だけした荒れ地がある。あそこもここも、いつかは人間の生活のために使われる土地になるのだろうか。あの空港と荒れ地がこちらへと浸食してくるのだろうか。そんなことを溜め息に込めて、僕は再び歩き始めた。

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