十六日祭まで
沖縄地方には十六日祭と呼ばれるお祭りがある。2月25日がお祭りの当日だ。
一般的にいうところの宗教が無いこの地方では、ご先祖の供養が宗教そのもののようだ。十六日祭はそんなご先祖様を奉るお祭りである。つまり内地の「お彼岸」にあたるものだ。
この時だけは、島の人達は忙しいキビ狩りの時期であっても手を休め、家族、親戚が集まり、墓を掃除し、宴を催す。
一方、製糖工場では、この日前後に「洗管」と呼ばれる作業をする。工場の中でキビの絞り汁やまだ固まっていない黒砂糖を流す管を洗うのである。
その前に、工場に積み上げられたサトウキビを処理しなくてはならない。各畑には出荷制限がされるようになる。NSさんのように規模が中くらいのところが一番制限されるようだ。大きいところを制限すればいいと思うが、段取上大きいところを先に終わらせるようにしているようだ。そんな訳で十六日祭が近くなるに連れ、休みが多くなっていった。
二月七日
今日は僕だけ午前中休み。昨日、僕が調子悪いのを見て休みにしてくれた。お昼にNSさんが迎えに来てくれて、午後から仕事だ。一時から五時の半日仕事だったのでとても楽に感じた。時間だけでなく、NSさんの畑は他の畑より僕にとっては楽だと思う。(今日は曇りで温度も低く、雨も降らなかったので楽に感じたのかも知れない。昨日はカンカン照りで26〜27度ぐらいになった。さらに泡盛のせいかも知れない。)
夜、晩御飯を食べに行くと、美奈子から小包が届いていた。中身はバレンタインのチョコレートと「手の字の鰻」である。早速、手の字の鰻を3人で食べた。久しぶりの東京の味に「頬がとろける思い」、という言葉を思い出した。久野さん夫婦は、味の美味しいことは認めたが「この柔らかさは老人食だ。沖縄でも鰻を食べるがこんなに柔らかいものはない。」と言う。
昨年、石垣に行った時、養鰻場があったことのを思い出した。この辺りは鰻の海の通り道であるから、鰻が上陸し、それを地元の人が食べる習慣を持っていても何の不思議もない。しかし、僕の直感としては沖縄に鰻は似合わない。
バレンタインのチョコレートを「みんなで食べましょう」と言ったら、ユキさんに「仕事の合間なんかに食べるといいから、持って帰って一人で食べなさい。」と言われたので、素直に「あっ、そうですね。じゃ、見なかったことにして下さい。」と持って帰ることにした。
このあとこのチョコレートがどうなったかだが、暑い畑にチョコを持っていくわけにも行かず、仕事が終わった後のお風呂から出た時に食べることになった。しかし、美味しい紅茶があるわけでもなく(疲れた体でチョコのために紅茶を入れる気にはなれない)アクエリアスかビポビタンDを飲みながら食べていた。もちろん美味しくない。

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