2月6日(その6)
仕事が終わったもののすぐにうちに帰れる状態ではない。まずは木の下で一休み。息を整えてから、と横になっていると、主の「飲め」の声。「もうだめ」と断ると「いいから飲め」と押し通される。自分でも「今日は大丈夫かも?」と妙な考えを起こして立て続けに泡盛の水割りを3杯飲んだ。飲めた。
しかし、ここから悪夢の始まりであった。「久部良までバイクだから、もう飲めない」と断り、横になっていると、少しづつ気持ち悪くなってきた。これはいけないと思い、バイクに跨り久部良に向かう。初めのうちは風が気持ちよく帰れそうだと思っていたが、桃原(NSさんの畑のある所。トーバルと読む。)の畑の近くに来たらどうしょうもなく気分が悪くなってきた。我慢出来ない。慣れた人なら指を喉に突っ込むところだろうが、僕はそれをやったことがない。僕の考えたことは「この先に久野さんの広場がある。あそこで寝よう。」である。どうにか広場の前まで来た。公道から土の道に入る。バイクが揺れる。僕の内蔵も揺れる。気分は最悪。寝ごごちの良さそうな所まで進み、どうにかバイクを止めてゴロンと寝た。ドテッとしたかったのだが、そうするともっと気持ちが悪くなりそうだったのでやめた。
夕焼けが見える。うっすら雲がある。とても綺麗だ。雲が流れていくようだ。きっと時間が経っているのだろう。苦しい。誰もいない広場で若い兄ちゃんがゴロンとしている。何をしているのだろう。
そのうち気分も良くなるだろうと、思ったがいつまで経っても良くならない。30分ぐらい経っただろうか、風も冷たくなり、自分の体も冷えてきたのを感じた頃、久野さんが広場の犬達に餌を持ってきた。恥ずかしかった。事情を話しこのまま寝かしてもらうことにした。この時、酔った勢いからか、久野さんの犬を「あれは雑種だけど良い犬ですよ。見た目もラブ似にているし、性格も良いし。」などと今話さなくても良い話をした。久野さんは面倒くさそうに「ゆっくり寝てけ。じゃ、あとで。」と去っていった。それから気分は良くなりそうにないし、風は冷たくなる一方だし、仕方がなのでデロデロな体を引きずりながらバイクに跨り、久部良へ向かった。
風は気持ちいい。胃はゲロゲロで今にもゲロゲロしそうだ。酒を飲み慣れていない僕は自分でゲロゲロすることが出来ない。きっとうまい具合にゲロゲロ出来ればこんなに苦しまなくてもいいんだろう。そんなことをモヤモヤの頭で考えながら農道をひたすらバイクを走らせた。

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