2月6日(その3)
僕が足を引っ張りながらも、離れの一角はお昼前に終わりそうだった。途中勝手に彼の一言で休みが入った。ほんの5分ぐらいであったが、彼と世間話をした。彼は役場で働いていて役場の命令で手伝いに来ていた。日当は出ないそうだ。僕が「この島に住みたいと思うがキビ狩りを簡単にやってのける人達と同じようには働けそうに無い。」と言うと「じゃ、役場で働くか」と誘ってくれた。「でも、今日みたいにキビ狩りを手伝うこともあるんでしょ」と答えると、「キビ狩りはお祭りみたいなものだから」と時々耳にする言葉が返ってきた。また「これがあるから若い人が島を出ていってしまうんだ。」と布団屋さんの友達が言っていた言葉をここでも聞くことになった。
畑で働いている人の多くはおじさんおばさんである。若い人の多くは一時的か永久にか島を出ていく。その埋め合わせが、旅の人達である。このキビ狩りというお祭りは島の若い人には歓迎されていないようだ。逆に新しい人間を呼び込む力を持っているようでもある。
離れの一角はちょうどお昼に終わった。僕は昼御飯を久部良のお弁当屋さんに取りに行かなければならなかった。この畑から久部良まではバイクでも片道15分近くはかかってしまう。急いで久部良に帰り、弁当屋さんに行って、うちへ帰り急いで弁当を食べた。ちょっと一休みしようかな、と思ったらもう時間がない。急いでバイクに跨り同じ道を引き返す。少し休みたいところだ。
一時ちょっと前に畑に着くと、午前中一緒に働いた役所の人はいなかった。僕は新たに一角をあてがわれ、そこを一人でやることになった。他人と一緒でないほうがマイペースで出来て気が楽だ。マイペースで出来る限り進む。手は抜かない。頭はクラクラしてくる。顔はジンジンだ。
まあ、自分なりに「こんなものだろう。これ以上は出来ませんよ。」と言うぐらいのペースでやっていた。全然楽ではない。でもキビ狩り人としては最低限のことをやっているつもりだ。そんな感じで仕事をしていると、時間も含めて全ての感覚が麻痺してくる。ふと思うと前に進んでいることに気がつく。そんなことを繰り返しているうちに3時になった。

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