2月6日(その2)
後ろの方の皮むき作業の音が静かになった。10時の休みだ。「休みだ」の声にすぐに体が反応しない。動き続けてしまう体が悲しい。動きが止まってもその場に座り込むのがやっとだ。しかし、おじさん、おばさん達は楽しそうにお話をしている。余裕だ。みっともないまねはしたくないと思い。休憩場所の木の下へと気合いを込めて進む。その理由は弱々しく見られたくないのと、気合いを入れないと立っていられないのと両方だ。
休み時間は皆のおしゃべりの時間だ。楽しそうに島の言葉でしゃべる。時々、気を使ってか興味本位でか僕に話しかけてくる。「どこから来た」「名前は」「いつもはどこの畑で働いている」などと聞いてくる。僕が一つ答えると皆何やら島の言葉で話し始める。僕にはさっぱり分からない。そんな簡単な尋問が終わると、他の話題で盛り上がっているようだ。そして主らしき人が気を使って色々話しかけてきた。「あそこにも、若いのがいる。この後はあいつと一緒にやってくれ」とカーステの聞こえる方向を指した。僕はなぜ皆と離れて作業しているのか不思議でたまらなっかたが、彼はそれ以上は言わないし僕も聞かなかった。
もう話すこともなくなったので、お菓子をしきりに勧めてくれた。朝食を軽く済ませた僕には神の施しのようであった。食べ続ける僕を見てどんどんお菓子を差し出してくれる。
息も落ち着かないまま、作業再開。離れで「若いの」と一緒に作業を行う。だいたい同じペースで作業が進められることを前提に段取りを組んだ。(二人でやるにはそうするしかなかった。)するとどんどん差を付けられてしまい、彼は時々一休みする。そのうち僕の仕事をジーと見ている。やりづらくてしょうがないが、気にしている余裕もない。そして彼が話しかけてきた。「一振りで切らないから、時間が掛かるんだ。」と教えてくれた。
ここの畑のキビとNSさんの畑のは種類が違う。ここのは細く小さい。NSさんの畑では、一振り一本が当たり前である。棍棒のようなあのキビを一振りで複数本倒すことは、この手斧では至難の業だろう。キビ自体も一本ずつ離れて植えてあるので無理なことである。ここのキビは細い代わりに5、6本まとめて植えてある。これを一度に倒すのが当たり前らしい。言われてみて試してみるが、不慣れな僕には3度に1度ぐらいしか出来ない。これでは差が出てきてしまって当たり前だ。(こんな分析をしていても畑の中では何の役にも立たない。言い訳にもならない。)

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