2月5日(その2)
バッタを見ながら海へと近づく。断崖絶壁だ。下には降りれない。その崖の見晴らしの良いところに、鳥の巣を2つ見つけた。二つとも使われている様子は無いようだが、何でこんなに目立つところに巣を作るのか不思議でたまらなかった。人が行ける所はイタズラされる所、と言う考えは万国共通では無いのか。
その後は、とりあえず比川に向かった。比川は大体見たことがあるので、もう帰ろうかと思い、農道を道に迷いながら久部良方面に進んでいると、2、3日前からユキさんちに来ている25歳の男の子が久部良の方から歩いてきた。
ところで、「ユキさんちに来ている」とは、これを一応説明しておこう。この島は旅の人が来る島である。前もって予約を入れて、旅館に泊まるような旅行の人ではない。旅の人達の中には、私など考えつかない行動をとる人が多い。そんな行動の一つがいきなり他人の家にお世話になるという行動だ。特にお粗末な宿泊施設の多いこの島では、「金出してこんな所に泊まるなら、、」と思う人も多いようだ。
25才の彼も先島(さきしま)のいくつかの島をまわって、この島に着き、そして、ユキさんちで「店の手伝いをするかわりに、夜お店で寝かしてもう」と言う話をつけていた。だから夜のご飯も何度か一緒だった。
その彼ととりあえず比川の浜まで行くことにした。浜に着くと「浜づたいに行くと、とても綺麗な浜があるって、久野さんが言っていた。」と彼が言うので、ひたすら浜づたいに歩くことにした。砂浜が切れては岩場になって、それを越えるとまた砂浜で、と幾重にも続いていた。が、綺麗な砂浜は出てこない。沖縄のはずれのこの島では砂浜が綺麗なのは当たり前のことだ。この島に住んで十年以上の久野さんが「綺麗」と言うからには「とんでもなく綺麗」なのだろう。しかし、期待通りの浜は見つからず、岩場が険しさを増してきたので、「場所が違うんじゃないのー」と言うことにして、引き返すことにした。
夜、久野さんに聞いてみたら「さらにその向こうだ」と言われた。残念に思った反面僕は少し疑った。

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