2月4日(その4)
MAさんの家を後にした僕は、うちに帰りお風呂に入って、一休みしていた。すると布団屋さんがやって来た。何日か前もやって来て「NSさんはいるかい」と顔を出したことがある。この布団屋さんは本島の人で一年の半分は離島を回っているらしい。毎年NSさんの世話になって、今年も祖納のNSさんの家に寝泊まりしている。しかし祖納の家はお風呂が使えないのでこっちの家にお風呂を入りに来ることになっている。商売人だけあって愛想がいい。標準語もうまい。話しやすい人だ。自分の名前も駄洒落で教えてくれた。
この人が友達を二人連れてやって来た。お酒を飲むというので、少し付き合った。友達の一人は具志堅用高似の見た目は怖いお兄さんだった。髭も着いている。この人は横浜市の矢向に住んでいて塗装の仕事をしている。と簡単に自己紹介をしてくれた。僕も名前と何でこの島にいるかを簡単に話した。沖縄で弓削と言うと石垣に詳しい人は解ってくれるが(石垣にはこの名字の人がいくらか住んでいる。港のある町にこの名字を看板に使っている和菓子やさんもある。)、多くの人は僕の名前を聞き取ることも難しいらしい。NSさんもそうだった。
しかし、この怖いお兄さん、しゃっべてみると気の弱そうな感じもした。もしこの人を東京で見たらちょっと避けたくなるような人だ。が、ここではそんな気は起こらない。相手がどんな人であろうとも一対一の人間であるといった感じで正面を向いて話し合える。ユキさんが2、3日前に「東京では外見で人を判断しがちだ。悲しい。」と言っていたのを思い出した。
その怖そうな人に「キビ狩りをやっている」と話すと、「あれがあるから島の若者は出ていってしまうんだ。」と言う。納得した。
そんな話を少しして「夜のご飯は別の所で食べるので、、、」と少し早かったがユキさんちへ行くことにした。少し早いのでOS君の家にお金を届けに寄った。その時、家の中を見せてもらったが、とても綺麗で驚いた。「これなら住んでもいいかな。」と思った。
8時を回った頃ユキさんちへ行って、いつものようにご飯を食べて、食後のジャンケンをして、負けて洗い物をした。帰っても布団屋さん一行がいると思ってこの日は遅めに帰った。しかし、一行はすでに帰っていてNSさんも寝ていた。次の日聞くと、「NSさんが帰ってきた時はすでにいなかった」と、言っていた。

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