この島には旅の途中で居着いてしまう人が多い。ほとんどの人は、日雇い的な仕事で稼いでいる。島の中には、そうやって暮らしている人も結構いる。キビ狩りの人手はそんな人達によって支えられている。僕もそんな中の一人なのだろうか。
キビ労働の人手の中には、寒い地方からの出稼ぎ組みもいる。しかし精糖工場で働くことが多いので、ほとんどそういう人に出会わなかった。

2月1日
午前中はきつかった。草むらの中にキビが2、3本立っているような所をやるとドッと疲れる。まともな畑なら同じ労力で10〜20本は倒せるだろう。
今日はそんな感じで全然進まず。皮むきのNSさんに追いつかれてしまった。NSさんは荷造りもやっている。追いつかれてしまうと情けないような気分になるが、雑草とつる草のためはかどらないのは仕方がない。
午前中、こんな調子のため仕事ははかどらない。しかし、暑さと疲労で頭の中がグルングルンと回っていた。倒れるかと思った。
午後はボチボチやった。ガンガンやりたくてもその体力も気力もない。

そんな頭で考えることは「何のためにキビ狩りをしているのだろう」、そんなことである。勢いだけで体を動かしている。自分が自分の体を動かしている実感がない。かすかな思考の中で「与那国にいる実感がない」とつぶやいている。
キビ狩りを終えて、それからどうやったらこの島のことがよく解るだろうか、感じることが出来るだろうか、漠然とした不安が頭の中の渦巻きの底に見え隠れしている。

夜、ユキさんちへ行って、ご飯の後早く帰ろうと思ったのだが、映画を見て結局帰ったのは十一時半だった。こんなことでは、畑とユキさんちの往復で終わってしまう。

ウチに帰ったら、NSさんはもう寝ていると思ったら帰ってなかった。帰ってきたのは朝方の四時ぐらいだと思う。