1月21日(2日目)   その2
ウトウトしながら畳ベットを再び下りたのは午後二時頃であった。もう小雨はやんでいた。そして、三時頃にユキさんちへ行ってお客さんとしてカレーを食べた。
その後は久野さんと動物の世話をしに出かけた。馬の他に鶏(色々な種類のものがいた)、台湾アヒル、犬(4頭)などがいる。世話をするのも、文字どおり一仕事である。世話の中に馬の運動(馬に乗る)がある。僕はポコチ君に乗った。とても元気である。久野さん曰く、「これぐらいの温度が馬にちょうどいいんだ」。冬の一番寒い時期(と言っても摂氏10度を下回ることは滅多にない。)がちょうどいい温度だとすると、一年のほとんどは暑いと思いながら過ごしているのだろうか。
年末に訪れたとき皮膚病がひどかったアキタ犬もだいぶ良くなったようだ。これも季節のせいだろうか。


この時、そして夜、久野さんと色々話をした。
彼の考えは「情熱さえあれば生きていける。素敵に生きていける」である。そして「バカになること」と言う言葉が出てきた。この言葉は僕が19才の時から掲げている目標である。しかし体力に自信がない僕には、正直に言えば「怖い」のである。バカになりきったとき体はついてゆくだろうか。そんなことを考えてしまうのだ。
彼は僕に「馬に対する情熱さえあれば、、、」と言う。僕は自分に問いかけた。「自分も美奈子も、与那国馬に対してどれほどの情熱を持っているのだろうか。」答えは「情熱と呼べる程のものは持っていない。」、これが正直な答えだ。

この情熱という言葉が出てきたのは、僕が「東京にいると色々なカタチを考えてしまう。例えばペンションを経営するとか。俗に言う「絵を描こう」とばかりしてしまう。」と人生相談のようにもらした言葉の回答であった。与那国に来ることを躊躇している僕に対し、彼はこんなことも言った。「ここに来ることを僕の両親は認めてくれなかった。遊びの延長のように思っていたようだ。しかし昨年、両親が会いに来た。この島まで来てくれた。12年経った今、やっと両親が僕達のことを、僕達のやって来たことを認めてくれた。うれしかった。」と感慨深げに語った。この話に少し考え込んでしまった。

キビ狩りの作業についても教えてくれた。まず、斧で刈る。鎌ではなく斧である。片手で持つので手斧と呼ぶらしい。次に、この刈ったキビを先が二つに別れている鎌で葉を落とす。そして、一本の棒のようになったキビを束ねる。束ねた後は工場の人か誰かは知らないが他の人が持って行ってくれるらしい。とにかく、束ねるところまでやれば良いらしい。