一晩で二頭

2001/06  uni 


ある金曜日の晩、うーにーを連れて駒沢公園を歩いていたら、とても腹の立つノーリードの小型犬がいた。
飼い主はジョギング、それにかろうじて着いて走るノーリード犬。
その犬はうーにーを見て背後から近づいてきて「う〜、う〜、わん、わん、わん!」。こりゃ捕まえて、飼い主に抗議してやろうと思ったら、犬も慣れたもので、人間には簡単に捕まらない。それでも飼い主に一言いおうと思ったら、犬に「だめよ〜」と優しく言いながら、スタスタとジョギングで行ってしまった。

ムカムカしながら歩いていたら、酔っ払いが口汚い言葉で誰にというわけでもなく、大声で騒いでいた。これでさらにイライラしていた。

その後、ノーリード集会の帰りだと思われる団体が前方からやってきた。
その中の一頭がうーにーの尻を嗅ぎに、わざわざ団体から抜けてやってきた。おとなしいラブラドールだ。特に問題はないが、うーにーは嫌がる。
いつもなら「困ったもんだ」と見ているだけだが、今夜はそんな気になれなかった。
その犬の体をむんずと掴んで飼い主に丁重お返しした。飼い主さんも恐縮して謝ってくれたので「ま、いいか」である。


その後、代官山近くのカフェへ。夜のカフェは、お洒落な若い人達でいっぱい。そんな時間、うーにー以外に犬はいないものだが、今日は違った。若いお兄さんがフラットを連れていた。そこそこにお行儀がいい。マナーとしては、問題のない範囲のしつけがなされていた。
しかし帰り際、うーにーに興味があるらしく、私達のテーブルの下に力ずくで潜りこもうとした。連れているお兄さんは、すかさずリードを引き寄せ「すみません」と一言。
しつけの出来ている犬の飼い主さんというのは、多くの場合、相手の気持ちを理解してくれるものである。きちんと謝る心をもっている。犬のトレーニング以前の問題である。
ご飯を食べている最中にテーブルが動いて嫌なおもいをしたのはたしかだが、後味が悪いことはない。
ちなみに、うーにーはこの間、寝ていました。フラット君の鼻先が近づこうとも知らん振り。


ちょっとお散歩が足りないなと思い、夜も更けた世田谷公園へ。
広場でちょっと遊ぼうと思ったら暗闇から一頭の柴系の犬が。その後ろから走ってくるオジサン。リードは着いていないようだ。

すぐにうーにーを脚側に着かせ座らせる。それをいいことにうーにーのお尻を嗅ぎまくるノーリード犬。オジサンが「首輪が抜けてしまった。捕まらないのです。」というので、今晩2頭目の捕獲。
確かに首輪は無かった。私が押さえている間、そこそこではあるが(犬として)紳士的な対応だった。

飼い主がやってきて「ありがとうございます。今晩はこれで終わりだ」と言うので、犬を引き渡した。
しかしその人がやることは、犬を抱きしめ続け、一向に首輪をつける気配がない。どうもお酒が入っているようだ。

私は、また放されるのが嫌だったので、首輪をつけるのを手伝うことにした。
「では私が押さえていましょう。」と押さえると、プライドを傷つけられたためか悲鳴をあげた。それでもオジサンはリードを付けない。そのうち犬も心理的に限界にきたみたいで、歯を剥き出しガウガウ。もうすぐプッツン状態だ。私は危険を感じた。それでも着けない。犬はどんどん暴れる。仕方なく私も力が入いる。とにかく簡単に首輪を付けられる状態にする。犬の心理はエスカレートし、凄まじい声をあげ、必死に私に歯を立てようとする。「指の骨くらい折られても仕方ないな。治療費やその他諸々は当然請求するけど。」なんて考えながら無表情で犬を押さえ続ける。

自分の犬の異常、異様な声を聞いてか、飼い主さんは慌てはじめた。しかし首輪をつける気がないようにしか思えない。その時初めて気がついたのだが、首輪はどこも見えない。
ひたすら平謝りする人だったので、怒る気ににもなれなかったが、このままだと朝になりそうだったので(ヘロヘロの)「後は私がやります。」という飼い主さんの言葉を信じて、私は手を引いた。

私が飼い主に抱きしめられた犬から離れると、うーにーが私に寄り添ってきたかと思った。しかし、私のところではなく、その犬のところへ行き、何やら諭しているよな、無事を確認するような、心配するような、そんなことをした。

その犬の精神は健全で、人間に歯を剥き、立てるが、人間に一目置いていることは分かった。それとオジサンの抱きしめ攻撃をはじめ、人間に自由を奪われることが、肉体的な危機よりも(<私も痛がるような押さえ方はしていない。)、精神的に許せないということで悲鳴をあげていたようだ。

こういうことがある度に思うことは、「犬って、本当に人間を許しているんだな、」ということ。そして、犬のことを勘違いしている人間がいることも。


その二日後、友達がこの世田谷公園に行ったそうだ。そしたらビックリ!
ノーリードの小型犬でいっぱいで、誰がどの犬の飼い主だか分からない状態だったそうだ。世田谷区では、ノーリード犬の問題は密かな大問題(?)になっている。しかし、その認識がない飼い主は多いようだ。

私も悲鳴をあげたくなった。