北陸旅行記 1996

6月6日(千体観音〜富来〜喫茶店)

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朝、起きると家内とうーにーは散歩を済ませていた。そして朝食。朝からしっかりとしたメニューだ。気合を入れてしっかり食べた。食後少し休んで、チェックアウトの準備。私は荷物を車に運び込み荷造り。その間家内は部屋の掃除。部屋が広いだけに大変だ。
チェックアウトの時にホテルの人に犬OKの宿にした理由を聞くと「出版社の人に勧められてやってみた。」と意外な返事(出版社の人に感謝!)。今まで特に大きな問題も無く(小さな問題はよくあるらしい)やってきているのでこのまま続けるつもりだと言っていた。
こんな話しもしてくれた。「関西方面からのお客さんが多いのですが、一日でここまで来るのはちょっと辛い。途中で一泊したいということですが、途中に犬連れOKの宿がないので苦労するそうです。小型犬を連れている方は普通のホテルに内緒で泊めてしまうらしいですよ。やたら吠えたりしない限り問題ないみたいです。」電車やタクシーに小型犬が乗っているのを思い出して納得した。それにしても犬連れOKの宿はまだまだ少ないようだ。

これが目指す「千体観音」。すごいところにある。

ホテルの近くの遊歩道を少し散歩し、その後「千体観音」なる所へ行くことにした。山道を歩いていくと千体の観音様がある所があるらしい。ちょっと山歩きがしたかったので行くことにした。山道の入り口に車を停めると木の箱が置いてありその中には杖が用意されていた。ちょっと不安がよぎる。家内が「やめようよ」と言いはじめる。「でも折角来たのだから、」と説得して登ることになった。家内は杖を使ってすでにお婆さん気分だ。少し登ると何やら作業をしているおばさんに出会った。「千体観音までどれくらいありますか。」と聞くと「5百メートル」と慣れた返事が返って来た。うーにーを見て「あんたも登るのかい。」と言うのでうーにーは喜んでそのおばさんに近づいた。(リードを持っていた私もこの人は犬が好きなんだなと思い込んで少し緩めた。)するとおばさんは驚いて身を引いた。変だな、と思いながらリードを引っ張り「御免なさい」と謝った。でも何故うーにーに話し掛けたのか不思議で仕方なかった。

登りはじめてその理由が分かった。とてもきつい山登りなのだ。しかしそれでも甘い考えだった。歩を進めていくと山登りではなく岩登りへと変っていった。登りはじめる前からうーにーの腰が心配だったが、千里浜での動きを見ていて多分大丈夫だろう、と考えていた。それに観光地の山登りなんてきついはずがないと考えていた。さらにもし腰の調子がおかしくなったら抱いて下ればいいことだと考えていたのだ。
これらは全て甘い考えだった。千里浜とは比べられないくらいきつい。張ってあるロープを使わなければ登れない所さえある。こんな所でうーにーを抱いて下りれる訳がない。しかもダニがいる。しかしかまってられない。後で取れば済むことだ。途中何ヶ所か難所がありその度に「うーにーが登れなけれは引き返そう」と考えていたが私達よりも上手に登っていく。一番危なかったのは家内だった。

  海岸線の手前に米粒のように
  人家が見える。

途中、下を見下ろすと遥か下方に海岸線が見える。北陸地方の丈夫な黒光りする瓦の家が小さく見える。こんなに登って来たのかと思うと同時に、これを下るのかと溜め息。しかし何とか全員目的地に到達することが出来た。家内はよれよれである。
確かに観音様のようなものがいっぱいあるが、だいぶ風化している。と思ったらそこにあった説明書きに「自然が造った観音様」と書かれていた。人間が作ったものではなかった。その説明書きには「この地は最近まで地元の人でさえ来れない難所で、、」とも書かれていた。納得。
来た道を下るのかと思うと気が重かったが、実際下りてみると(登りに比べれば)楽だった。心配していたうーにーの腰も全然問題が無かった。この腰は本当に弱いのだろうかと疑いたくなった。

ちょっと疲れたが昨日はよく食べよく寝たので「心地よい疲れ」だと私は思ったが家内は私を怨んでいるようだ。グロッキー状態。そんな私達が曽々木を後にしたのは11時半過ぎ。後はどこかでお昼を食べて富山に戻るだけなのでのんびり行けば良い。多少疲れていたって問題はない。

ヤセの断崖にて。
向こう側は断崖絶壁。

と、強気のことを考えていたが道中眠くて仕方が無い。休み休みどうにかヤセの断崖なる所まで着いた。駐車場に車を止め少し歩くと凄い断崖がある。これがヤセの断崖らしいが別に楽しい所には思えない。眠気はどこかに行ってくれたのが唯一の収穫だ。他に寄ろうと思った所があったようだが(運転手は私、行き先を決めるのは家内)やめて昼食予定地へ。

昼食予定地、富来のステーキ屋さんに着いたのは2時を大きくまわっていた。駐車場に屋根は無かったが丁度建物の影になっていたのでここに車を止めてうーにーには留守番をしてもらうことにした。お店の前はきれいな芝生。うーにーをここで遊ばせたい(フリスビーなんぞやってみたい)がきっと怒られそうだし、お腹が空いているのでとにかく店内に入る。お薦めメニューは大きなステーキにドンとフォアグラをのせた贅沢なメニューをメインディッシュにしたコースだ。貧乏人の私はこの手のものは恐怖を感じてしまうのだが、昨夜の一泊で「たまの贅沢もいいもんだ」と思い込んで何迷うことなくこのコースを注文した。この辺りはフォアグラの産地でもあり牛肉の産地でもあるようなので結構安い。
お皿が出てくるまで店内を見渡すと何故か犬の絵(モダンアート)が飾ってあった。豚のものもあったので特に意味は無いだろう。そんな絵をボーと見ていると家内が「犬がそこを通ったよ。この芝生を走っていったよ。」と声をかけてきた。ボーとした私ははっとして振り返って芝生を見るがもう犬はいない。「飼い主はいた?」と聞くと「いないみたいよ。」と言う。この辺りの犬は自由に生活しているのだろうか。車の通りが激しい道が近くにあるのに大丈夫だろうか、と心配してしまった。そんなことを考えながらボーとしていたら料理が出てきた。メインディッシュが出てきた時は「こんな贅沢なものを食べてしまっていいのだろうか?」と思ってしまい、また「こんなに大きなステーキを食べきれるだろうか? もし残してしまったら一生悔やんでしまう。」とやはり貧乏人の性は隠せない。
しかし食べてみるとペロっと食べられた。千体地蔵の岩登りが効いているようだ。それに美味いものの入る胃袋は別に用意されているらしい。(しかし昨日のカニとの格闘には敗れた、、)

桜の木の下に車を止める。
防波堤の向こうは、もう砂浜。

(上)窓の拡大写真。

人間は満足したのでうーにーを遊ばせてやらなくてはと思い、海岸の方へ車を移動する。お土産やさんと民族資料館とが一緒になったような所があったのでそこに車を止める。駐車場の一番端に小さな桜の木があってその木陰に車を止めた。一応、利用しないと悪いかなと思ってお土産やを覗いてみる。うーにーは車でお留守番。車から離れていく私達を見るうーにーは車の中に浮かんだ心霊写真のように青白く物悲しい表情を浮かべていた。お土産やさんから戻ると相変わらず心霊写真で待っていた。実はこの駐車場の裏はもう砂浜なのだ。うーにーは臭いでそのことは分かっていたと思う。「今まで我慢したのにまだ遊ばしてくれないの?」と言いたいようだった。「はいはいあなたの出番ですよ」と車から降ろすとまだ疑ったような顔をしている。リードを付けて防波堤を登る階段に向かって歩きはじめたら「やった〜」と言わんばかりにはしゃぎはじめた。そんなうーにーを抑えつつ階段を登り切るとそこには世界一長いベンチがあった。ガイドブックで見ていたので知ってはいたが目の当たりに見ると何処までも続くその長さに溜め息。3時をまわっていたがまだまだ強い日差しの中、眼下に広がる砂浜にまた溜め息。白く真っ直ぐに伸びる砂浜に人影はない。6月初旬の平日の海岸に人影があるはずもない。
世界一長いベンチを越えて(途切れていないので越えるしかない。橋のようなものが用意されているのでそれを渡る。)砂浜に下りていく。砂は熱い。だけどうーにーは気にしないようだ。元気に走り回る。私達の少し離れた所を走り回るうーにーが突然止まったと思ったらウンチだ。誰もいないきれいな砂浜でのウンチは(ちょっと暑そうだが)気持ち良さそうだ。そこに落とされたものは白い浜によく映える。滑稽でそこに飾っておきたかったがもちろん拾って帰った。
海もきれいだ。海に入れてやりたい。うーにーも入りたがっている。しかし上がってから洗うための水が見当たらなかったので我慢してもらうことにした。その代わり思いっきりノーリードで遊ばせてやった。暑さもあって30分くらいでバテてしまったが満足したようだ。

カンカンと照っていたお日様も夕日に変りはじめた4時半過ぎ、富来海岸を後に富山へ向かった。喫茶店に戻ったのは6時半。私はこのまま寝てしまいたい気分だ。でも晩御飯がまだだった。喫茶店でお客さんをしていると地元の人が「安くて美味しくて気軽に入れる」お寿司やさんを教えてくれた。考えてみたら富山で美味しい魚を食べさせてくれるお店に入っていない。富山での外食といえば喫茶店のマスターが夜遅くに市内を案内してくれた時食べたラーメンくらいしか思い浮かばない。「行かなくては!」と眠気を抑えてお寿司やさんへ。うーにーには晩御飯を食べてもらって食後の休憩でケージの中で留守番してもらうことにした。
お店は評判通りでとても気に入った。残念なのは自分の体調、それと昼食が遅かったこと、量が多かったこと。面白いのはアルコールを置いていないこと。回転率を高めるためにそうしているそうだ。
美味しいお寿司を目の前にして満足ゆくまで食べれなかったことを残念に思いながら喫茶店に戻るともう寝ることにした。うーにーもお疲れの様なので寝る前のオシッコを済ませてすぐにオヤスミナイであった。


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