北陸旅行記 1996

6月1日(下:熊牧場〜ペンション)

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いかにも観光地的な山道が終わって少し山を下りはじめるとと「熊牧場」の看板が目に入った。地図に載っていたので興味はあった。人里からは遠く離れている。この山道からも牧場そのものは見えない。少しの不安とともにハンドルを切る。山道(国道)から外れて矢印に従って進むと売店と切符売場があった。家内が犬はOKか確認に行く。OKの返事をもらっていざ入場。と思ったがここから長い坂道を登らなければならなかった。上の方からは激しい雄たけびが聞こえてきていたが、うーにーは怖がる様子もない。50mくらい登ってやっと牧場に着いた。

 これは生きている熊
 迫力満点

まず出迎えてくれたのは剥製の熊だった。うーにーは距離を取り顔を伸ばし鼻をフンフンさせて簡単には近づこうとはしない。「大丈夫だよ」となだめて、なだめて、なだめて、やっと20cmくらいまで近づいた。あまり無理なことをやっても意味がないのでこの辺りでやめた。これから先は生きている熊である。

ホッキョクグマを食い入るように見る

勿論、熊は檻の中。うーにーはまずは怖がってビクビクだったが、熊がこちらまで来ないことがわかると、さかんに熊を観察していた。特に興味を持っていたのはホッキョクグマだった。自分に似ていると思ったかどうかは定かでない。観察している内にコミニュケーションがとれないことがわかると飽きてしまったようで、他のお客さんに愛想をふりまいたりしていた。人間の方は簡単に飽きないので、つまらない顔をしたうーにーを連れて熊牧場の中を一通り見てまわる。

 
 
そして帰ろうとした時、うーにーよりも小さな子熊が2頭、お姉さんに連れられて出てきた。2頭とも4ヶ月の雌だそうだ。犬用と思われる皮の首輪にチェーンのリードを着けてお客さんに愛想をふりまいていた。他のお客さんがいなくなった後うーにーを連れて「近づけても良いですか?」ときくと「まだ犬を怖がるかも知れませんが、まあ大丈夫でしょう。」と言った感じの返事が返ってきたので少しづつ近づけてみる。
子熊はお姉さんの後ろに隠れてしまった。よく見ると目を剥いて口を大きく開け(牙を見せて)威嚇している。(犬とよく似ている。)家内が子熊に触った。(私はリードを持っていたので触らなかった。)子熊は毛が硬く、手を口元に持っていっても歯を立てることはしなかった。他のお客さんと接しているのを見ていたが爪で引掻かれた人はいたが、噛まれた人はいないようだった。二本足で立てる動物なので手が器用で口は犬ほど使わないのかも知れない。しかし牧場内のあちらこちらでやっていた喧嘩では手(爪)も口も使っていた。生傷を負っていた熊が何頭もいた。気性の荒い動物らしい。
結局、うーにーは子熊と遊ぶことは出来なかった。お姉さんが「これ以上近づけると攻撃に出てしまうかも、、」と言うので遊ばせることはやめた。

今日は熊舎から下の方へ移動らしく私達の帰りと一緒になった。このお姉さんは既に子熊とラブラドール(成犬)を一緒に育てた経験があると言う。今日の2頭はO.E.S.と一緒に育てるのだそうだ。初めの内は成犬が子熊をうまく遊ばせているのだが、そのうち立場が逆転するのだと言っていた。
歩きながら話していると他のお客さんが子熊と一緒に写真を撮りたいとお姉さんに声をかけた。お姉さんがカメラに気を取られたわずかな間に2頭の熊はヨッコラ、ヨッコラと木を登りはじめてしまった。熊達はお姉さんに怒られ、1頭は下りてきて、もう1頭はうまく下りれない。いかにも子供といった感じだ。

折角車から降りれたのに、うーにーにとってはあまり楽しい所ではなかったようだ。うーにーが遊べるような所もないので1泊目の宿に向かって再出発。

山を下り川沿いの平坦な道を少し走って脇道へと入る。所々に人家が見える。上り下りの忙しい細い道である。坂道を登ると辺りがぱっと開け町役場と公民館があった。目的のペンションはここから一本道のはずである。役場から少し走っただけで人家はどんどん少なくなっていく。人家どころか田畑もなくなってきた。つまり「山の中」だ。どんどん車を進めていくと開けた場所に出た。この山中には似つかわしくない場所だと思ったらゴルフ場の入り口。しかしクラブハウスは奥の方にあるらしく道からは見えない。コースも見えない。変な感じだ。心細くなってきたが公衆電話もないしひたすら走ってペンションを探し続けるしかない。うーにーは相変わらず踏ん張っている。もう慣れただろうか。それとも「お願いだから停めてくれ〜」と言いたいのだろうか。私には知る術はない。
いくら車を走らせてもそれらしい建物もない。しかし迷うはずもない一本道。諦めかけていた頃建物が見えた。喫茶店のように見えたがとりあえずよ〜く見てみるとそこがお目当てのペンション。

ペンションに着いたのは3時頃。御主人がラフな格好で出迎えてくれた。出迎えを奥さんに引き継ぐと御主人は消えてしまった。その後正装して車で出掛けて行った。山の中で妙な光景だ。後から分かったことだが御主人は音楽関係の仕事をしていてこの時も仕事に出掛けたのであった。
奥さんに部屋を案内されて荷物を入れている時(ケージなどうーにーの荷物が結構ある)、ここの娘さんが何かと話し掛けてくる。今日は土曜日であるが、こんな山の中では近所に友達もいないのだろう。その子は5歳と言っていた。うーにーを見て「犬を遊ばせるのにいい所があるよ。」と言うので、荷物を運び終わったら彼女の案内で行ってみることにした。その場所は広大な別荘地であるが、別荘は遠くの方に3戸ばかり点在しているだけ。入り口は一ヶ所で鎖で車止めされており、ペンションの隣にある別荘地の販売所(建物は立派だが今は使われていない。)はキツツキに穴だらけにされている。

別荘地に到着して間もない頃。まだやたらと、「紐を持たせて」と言っていた。

ちょっと造成してあり怪しい感じの別荘地だが、犬を遊ばせるのには最適だ。造成してある所がフリスビーなどをするのに最適であった。しかしフリスビーが風に流されると崖(というほどでもないが急に低くなっている所がある)に落ちてしまい、それをうーにーが凄い勢いで追いかけ行ってしまってヒヤヒヤした。

ここに来るまではさかんに「紐(リード)を持たせて」と言っていた娘さんであるが、うーにーの激しい動きを見て「え〜」と言いながら私の後ろに隠れてしまった。うーにーは私の所にも凄い勢いで走ってくるので、娘さんはさらに遠くに逃げてうーにーの動きを恐々見ていた。まさかこんなに怖がるとは思わなかった。きっと彼女はうーにーの人前での動きと運動中の動きのギャップが理解出来なかったのだろう。

走り回る姿をみたら、遠くへ走って行ってしまった娘さん。そんな彼女を怖がらせないようにフセをさせる。

奥さんから聞いた話しによると、この別荘地はバブルの時に売り出して少しだけ売れたがその後、謀宗教法人がまとめて買おうとしていたらしい。確かに入り口が一ヶ所で道から中は見えない。それにとてつもなく広い。世間から隠れるには良い所だろう。それと同時に犬を遊ばせるのにも良い所だ。

今もこの土地は売りに出されている。別荘が出来てしまう前にまた来たいものだ。

別荘地で一通り遊んだ私達はペンションの施設を案内してもらった。敷地内には三つの建物があった。ペンションとオーナー達のお住まい、それと音楽堂だ。この音楽堂で音楽の練習を心置きなく出来るそうだ。とにかく近所に人家は一軒もない。夜遅くまで音を出してもどこからも苦情が来ないそうだ。夏は音楽の合宿に使ってもらっているそうだ。それくらい山の中なのだ。

  後ろに見えるのが音楽堂
   



部屋はツインの部屋に補助のベットを加えて3人泊まれるようになっていた。ベットに上がらないうーにーにとってはとても狭い部屋だ。ケージを置くとうーにーの歩き回る場所はない。宿泊施設を利用する時「ハウス」(人間が食堂でごはんを食べている時などケージに入ってもらう。)と「マット」(敷いたマットの上で休む命令。)を覚えさせておいて良かったとつくづく感じた。

音楽関係の仕事をしているのはお主人だけではないらしい。奥さんもだそうだ。食堂に入るとピアノを初め幾つかの楽器が置いてあった。その他世界各国の小物が置いてある。一つ一つをよく見ると全く別の国のものであることが分かるが全体的に調和が取れていてお洒落でかつ落ち着いた感じだ。食事もそんな感じで個人的にはとても好感が持てた。
食堂にうーにーを連れて入れないのは残念だが、それは一般的なことなので仕方がない。「犬は食堂に入れないことは常識だ」ということが残念である。


夜、犬連れの他のお客さんが到着した。丁度その時私は部屋から外を眺めていた。その飼い主は車を止めるといきなり犬をおろして(ノーリードで)自由にさせていた。気持ちは分かるが駐車場の前は山の中の一本道。車やバイクがビュンビュン通る道だ。自分の犬がひかれてもいいのだろうか?
少し外に出してもらった後は夜遅くまで車の中に入れられていた。次の日の朝も気がついたら車の中にいた。夜寝る時だけ部屋に入れてもらったようだ。私としては「可哀相」と思わずにはいられなかった。年に何度も行かない旅行のために「ハウス」や「マット」を練習するのは可哀相と思っているのだろう。彼らの荷物の中にはケージは無かったようだ。随分大きな犬なのでケージを持ち歩くのも大変なのかも知れない。ゴールデンの雌を飼っている私は、大型の日本犬系雑種(たぶんアキタの雑種)の雄の扱いが(うーにーに比べれば)難しいことは想像がつく。しかし具体的なことは何一つ想像出来ないので黙って彼らを見ているしか私には出来なかった。
公共の場で犬の行動を見て、犬の躾を考える時、考慮すべきことがとても多すぎて難しいとつくづく感じる。多くの人が訓練の機会を得られるような社会になって欲しいと強く願うばかりだ。犬が当然のように電車に乗れる日はまだまだ先のようだ。

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