(適用範囲)
第二条 この法律は、動物の狂犬病のうち、犬の狂犬病に限りこれを適用する。但し、厚生大臣は、家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一条第一項に掲げる家畜以外の動物について狂犬病が発生して公衆衛生に重大な影響があると認めるときは、動物の種類、期間及び地域を指定してこの法律の一部を準用することができる。この場合において、その期間は、一年をこえることができない。
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引用元は以下(これを私が手入力しました、なので間違っているかも)
狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号
・基本的には「犬だけ」に適用する
・但し、犬以外かつ「家畜伝染病予防法で適用される家畜」以外の動物で狂犬病が発生したら、この法律を準用する
・その期間は一年以内
「犬だけ」に適用
家畜伝染病予防法でも幾つかの動物の狂犬病を扱うことは、この条文からも分かると思います。
狂犬病予防法が出来るまでは、家畜伝染病予防法で犬の狂犬病も扱っていました。それを独立させたのです。
家畜の法律は酪農家など一部の人たちが関わる法律となりますが、犬の狂犬病は(当時は)国民全員の問題でした。それが独立させた理由の一つだと思います。
家畜が感染した場合、人間への感染よりも家畜が被害にあうことが問題になり、それとは別問題として人間への感染対策を行う必要性に迫られたのだと思います。
管轄省庁は(現在の省庁では)狂犬病予防法は厚生労働省、家畜伝染病予防法(農林水産省)です。
家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一条第一項に掲げる家畜
狂犬病予防法が成立する前の「家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)」の「第一条第一項に掲げる家畜」を列挙します。
牛、馬、緬羊、山羊、豚、犬、鷄及鶩
最後の「鶩」はアヒル。
狂犬病予防法が成立し、この中から犬は除外されますが、これらの動物の内、犬以外の哺乳類でも狂犬病に感染したとおもわれる症状になり死亡した報告が何例も残っています(狂犬病予防法が成立した昭和25年でも狂犬病ウィルスの分離は簡単ではなく、狂犬病の判断は症状によるものがほとんどでした)。
ところで、これらの動物を見て「六畜」という単語が浮かんだ方もいらっしゃると思います。
遠い昔から中国で家畜とされていた動物と説明されることが多いですが、平安時代に編纂された延喜式の巻三臨時祭の中にもこの単語が出てきます。
六畜とは「牛、馬、羊、豕、犬、鷄」。五畜という単語もあり、六畜から犬を除いたものとするのが一般的ですが、犬ではなく馬や鶏を除く場合もあるとか。
とにかく、日本でも古来から家畜としてきた動物たちが挙げられています。
犬でも、家畜伝染病予防法で適用される動物でもない動物
犬の狂犬病は狂犬病予防法で、家畜伝染病予防法で定められている動物はその法律で、ではその他の動物はどうなる?
その疑問にこたえたのがこの条文。
・動物の種類、期間及び地域を指定してこの法律の一部を準用
・その期間は、一年をこえることができない
他の動物にも、狂犬病予防法で定めた犬にすべきことの一部を準用できる。
その場合「動物の種類」「期間(一年以内)」「地域」を指定する。
(参考)「準用」とは?
ネットで「準用 読替」でネットで検索してみてください。
比較的分かり易いと感じたページは以下。
人事担当者のための法律読みこなし術 - 第22回 準用する
このページの例の要点は、「変更」するときも「策定」するときと同じく、3と4の手続きを行う、ということ。
野生動物における狂犬病の可能性について
韓国や台湾の例から日本でも森林型の野生動物狂犬病対策を検討するべきなのかも。
犬でも家畜伝染病予防法でも定められていない動物は何?
※以下は「現在」の話です。昭和25年成立時の話ではありません。
どんな動物でも狂犬病の感染が広がっている動物があれば、その動物を指定するのかとおもっていたら、そうでもないらしい。
狂犬病予防法施行令に以下の定めがある。
(法の規定の一部が適用される動物)
第一条 狂犬病予防法(以下「法」という。)第二条第一項第二号の政令で定める動物は猫、あらいぐま、きつね及びスカンクとする。
猫はここに入っているのですね。
ハクビシンが入っていないのは個人的に怖いと感じますが、ここに定められている動物は世界的にみて人間の感染源になるとされている動物。
私もハクビシンからの感染がよくある地域というのは見聞きしないです。
狂犬病予防法施行令は、昭和28年に制定(たぶん8月26日)・公布(たぶん8月31日:薄くてよく見えない)・施行(9月1日)されている。
その理由として「狂犬病予防法の一部改正に伴い、政令で、犬の登録及び鑑札の公布、注射済票の公布等に関して必要な事項を定める必要があるからである。」と書かれている。(5ページ目)
当時の狂犬病予防法施行令はこちら。
もし内容に間違いがあることをお気づきの場合、疑問点がおありの場合等、以下の「こちらから」ご連絡いただければ幸いです。
2023.10.8 「犬でも家畜伝染病予防法でも定められていない動物は何?」を追記
2023.12.9 「家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一条第一項に掲げる家畜」を追記
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