(隔離義務)
第九条 前条第一項の犬を診断した獣医師又は所有者は、直ちに、その犬を隔離しなければならない。但し、人名に危険があつて緊急やむをえないときは、殺すことをさまたげない。
2 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができる。

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引用元は以下(これを私が手入力しました、なので間違っているかも)
狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号



・誰が隔離する?
 「獣医師」又は「所有者」
・予防員は?
 隔離について必要な指示ができる



 隔離などは「獣医師」又は「所有者」


狂犬病は人の命に関わる病気です。発症したら命は助からないし、昔の暴露後ワクチンは(個人差・製品差があったのだと思いますが)副作用が激しい場合もあったという話を聞いたこともあるので、関わる人の数を少しでも少なくしたかったのだと思います。

法律全体の雰囲気だと「大事なことは予防員の仕事」なので「予防員への引渡し~抑留~隔離」になるだろうと考えたのですが、現在の条文も(「さまたげ」が「妨げ」になっていますがほぼ)同じでした。

人の命、犬の苦痛なども考えてだと思いますが(隔離だけでなく)「殺すことをさまたげない」と書かれていて、狂犬病の恐ろしさを感じます。



また一度感染が始まってしまうと一気に広まり、体制を整る余裕がないことも経験から学んでいるのかも。

何度も紹介していますが、「犬の」狂犬病の発生頭数の推移が表になっているページへのリンクを貼っておきます。
わが国における犬の狂犬病の流行と防疫の歴史 4人と動物の共通感染症研究会
1907年(明治40年)からの流行の数字とその説明を読んでいただければ、予防注射をしておかないと一頭の犬から全国に広まる可能性があることを理解できると思います。

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昭和28年に印刷された厚生省の広報資料には「犬の」狂犬病数以外にも「被咬傷者」数、「人の狂犬病」数(=死者数)も記載され、さらに以下の説明書きもあります。

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この他狂犬病かどうか、分からない犬にかまれて注射を受ける人々が、年々数千人もあり、これらの人々及びその家族は、予防注射が間に合うか、注射のための危険がないかとおびえながら病院に通つているわけですが、既に伝染病研究所だけでも、戦後この予防注射のために半身不ずいになつたり、発狂したり、注射のために死んだ人が78人もでているのです。
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今でいうところの暴露後ワクチンについて、最後の部分で「伝染病研究所だけでも、戦後この予防注射のために半身不ずいになつたり、発狂したり、注射のために死んだ人が78人もでているのです」と書かれています。

今のリンクから得られる資料の中の30ページからはじまる「広報資料 狂犬病」内、資料全体の32ページ(広報資料の5ページ)に明治32年~昭和27年の狂犬病発生数、資料全体の33ページ(広報資料の6ページ)に表「最近6年間の狂犬病発生数」があり、その上に上記に引用した記述があります。

狂犬病予防法の一部を改正する法律

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予防接種のはじまりとその効果については(こちらも何度も紹介していますが)以下のページに書かれています。
日本の狂犬病の歴史大阪府獣医師会




 この条文とは直接関係ないですが


一気に広まることを人間の感染発生件数からみていきたいと思います。

「人の」狂犬病の発生件数を見つけました。
※縦軸が対数(1,2,3,4,,, ではなく、1,10,100,1000)になっているいます。
狂犬病:その歴史と現状ならびに防疫対策J-STAGE)(2007年)
やはり世の中の動き(狂犬病対策を含む)によって増減することが分かります。

(野生動物の狂犬病)
おまけ的に同じくJ-STAGE で見つけた以下の論文も紹介しておきます。
世界の野生動物狂犬病の現状と日本の対応策 (2013年のものらしい)
私も野生動物で根付く可能性を考えることがあります。その感染源は違法(検疫を受けない)動物。
予防接種の接種率が下がり、そのような動物から感染が広がった場合どうなるか心配です。




もし内容に間違いがあることをお気づきの場合、疑問点がおありの場合等、以下の「こちらから」ご連絡いただければ幸いです。

2023.8.262023.8.26
2023.8.26 公開
2024.3.20 昭和28年の厚生省の冊子中の狂犬病発生数の記載ページの紹介を追加
#法律 #狂犬病 #狂犬病予防法 #1950 #狂犬病発生時 #隔離