塀の上の犬

2000/12   きつね洞さん より


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いつもと違う道を歩いて帰って来たら、
普通のおうちのブロック塀の上に、黒い猫がいました。
塀の上に猫…普通ですね。
最近はめっきり寒くなりましたから、ひなたぼっこをしているのね、
と思いました、私は。

でも…なんだか変なのです。猫にしては、ずいぶん大きい。
あんな大きな猫がいるのかしらん、と近付いてみると、
それは、犬でした。

ぼさぼさの毛の、耳の立った犬で、シルエットは猫に似ているのですが、
やっぱり大きすぎる…犬だぁ…。
黒犬はいい気持ちそうに半眼あけて、私を塀の上からちらりと眺め降ろし、
そしてまた昼寝し始めてしまいました。猫そっくりに。
よく見ると、首輪に鎖が付いています。
塀の中の庭に犬小屋があって、そこから塀に登るのが趣味らしい。
しかし…間違って、道のほうに落ちたら、
首吊ってしまうのではないでしょうか。

私はちょっと心配になり、立ち止まって
「あんたねぇ…こっちに落ちたらどうすんの?」と尋ねてみましたが、
黒犬は返事に大きなあくびをしました。
よけいなお世話だったらしいです。