すっかり秋の気配となったある夜のこと、う〜に〜が横目で私を見ながら独り言を言った。
「今年はまだ海に行ってないな、もしかして行かないのかな。雲丹という名前でありながら一度も海に行かずに1年が終わるなんて、信じらんなーい」
ご丁寧に最後に「ぶふ〜」と言うため息までついていた。こうなっては仕方ない。私は早速仕事を休む段取りをつけ、宿の予約をした。う〜に〜様を怒らせると後が怖いっすから。

 5時半起床、寝ぼけ眼のう〜に〜に朝食を食べさせ6時半出発。天気は晴れ。海沿いの135号を通って10時、下田は須崎、いつもの九十浜海水浴場の駐車場に着いた。
 下田の海は秋の方が水温が高い。10月でも晴れて暖かければ十分泳ぐことができる。ダンナは去年も泳いでいるので、今年も海パンの他マスク、シュノーケル、フィンの3点セットを持って来ている。
私は水着は持って来ているが、面倒なので海に入るのは下半身だけに決めていた。更衣室で着替えをして、浜に続く長い階段を下って行った。う〜に〜は既に、普段の散歩時とは顔つきも歩様も違っている。普段はさもつまらなそうにトボトボ歩いているのに、「早く早く」という感じである。東京での散歩がよほどつまらないのね。
 浜は台風で打ち上げられたゴミでものすごく汚かったが、海は透明度が高くきれい。マスクで覗かなくても、小さい魚の群れが泳いでいるのが見える。ダンナはワタリガニを捕まえていた。う〜に〜はリードを放した瞬間からもう大興奮で、投げたオモチャを取りにすごい勢いで泳いで行く。はっきり言って家にいるのとは別犬である。私が投げたオモチャを取って来たり、ダンナにくっついて泳いだりして、しばらく3人で楽しく遊んだ。しかしダンナが沖の方へ行ってシュノーケリングをしようとすると、う〜に〜が猛然と追って行って追いつくと岸へ帰らせようとするのである(水難救助犬か?)その時に爪で引っかかれてミミズ腫れになるし、満足に魚は見られないしでダンナも困るしう〜に〜も疲れすぎてしまう。そこでう〜に〜を岸に連れて行って強制的に休ませることにした。すると何と、う〜に〜が遠くに泳いで行くダンナを見ながら「ピーピー、キューン、キュワワワーン」と悲鳴を上げているのだ。う〜に〜はこんな声を出すことがほとん
どない。8年一緒にいて初めて聞いた声だった。とにかくもう行きたくて行きたくて、いても立ってもいられないらしい。「行ってよし」と言うとものすごいスピードで浜を走り、ガンガン泳いであっという間にダンナの所へ行ってしまった。
 そんな風に疲れ知らずのう〜に〜と昼になるまで遊んで、後ろ髪思い切り引かれ状態のう〜に〜を連れて車に戻った。もっと遊ばせてやりたいが、この後洗わないといけないし、あまり長く海で遊ぶと塩分中毒で吐いたり下痢したりということもある。長くても2時間程度といったところだろう。
 宿のシャンプールームはチェックイン前でも使用できるのでとてもありがたい。洗い流してドライヤーで大雑把に乾かし、空腹を覚えたので爪木崎公園の売店に行って磯ラーメンを食べる。ここは店内犬OKで水も出してくれる。ラーメンの他ココナッツシャーベットまで食べ、また九十
グッタリ・ダウンのう〜に〜



北海道礼文島
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浜の公園に戻って芝生にゴロンと皆で寝転がって休憩した。秋晴れのとっても気持ちいい午後だった。

 3時を回ったので、今日の宿「天使のしっぽ」にチェックイン。ここは私の好きな宿の中でも、五指に入るお気に入りである。海遊びに最適なので、ここに来る時はいつも海水浴ばかりしている。う〜に〜は宿では遊び疲れていつもぐうすか寝ているので、オーナーさん夫妻はいつもう〜に〜のぐったりな姿しか見ていない。それほどう〜に〜にとっても居心地のよい宿ということである。 冷たいアイスティーをいただき、部屋でシャワーを浴びたら私達もどっと疲れてしまい、夕食の時間までだらだら寝ていた。
 夕食前にう〜に〜に食事をさせ、トイレ散歩をすませる。海で泳いだ後はトイレが近くなるので、いつもより頻繁に外に出さなければならない。そして待望の人間の夕食。う〜に〜はテーブル脇でお休みタイムとなる。夕食はイタリアン系コース料理で味もよく量もちょうどよい。ちょっと残念なことに、ここでいつも飲む私好みの赤ワインが今回は置いていなかった。しかしそのワインでなければ駄目などということは全然なく、すぐに他の赤ワインを賞味。この日の客は私たち含め4組、犬はゴールデン4頭ダックス2頭であった。どの飼い主さんもきちんと犬をしつけていて、マナーのよい犬ばかりで気分がよかった。


 さて翌日。少し曇っていて前日より寒そうである。予報では夜から雨。美味しい朝食をいただき、早速九十浜へ出かける。う〜に〜はまたもやヤル気十分である。
タマちゃん?
手乗りフグ
 浜に下りるとう〜に〜はおもちゃ投げを要求し、しばらくレトリーブごっこをしていた。そのうちダンナが3点セット装備で海に入ると、う〜に〜はやはりその周りをぐるぐる回遊しているのだった。私は腰まで水に入ってカメラを構え、泳ぐう〜に〜を撮影していた。波打ち際をふと見ると、とても浅い所にフグがいる。寝ているのか、ぼーっと漂っている。ダンナが手ですくってみたら間抜けなことにそのまま捕まってしまった。やはり寝ていたのだろうか。我に帰ったフグは、ダンナが手を水につけるとサーっと走るように泳いで逃げて行った。う〜に〜は面白がって追っかけたがすぐに見失ってしまい、「あれっ、どこに行ったの?」と言うように顔を水に突っ込んでいつまでも探しているので、可笑しくて笑ってしまった。
 日曜日だからか、この後続々と人がやって来て、何と泳いでいる人が近くにいるのに波打ち際で釣りをするヤツまで現れた。カヤックに乗った人も来た。私たちは昼過ぎまで遊んで、宿に戻った。う〜に〜をシャンプーしドライヤーで乾かし、九十浜公園に戻って散歩。またラーメンを食べに行こうとするが、何だかもう疲れてしまって歩くのが面倒になり、結局昼を抜いてしまった。本当は吉佐美の方にあるという犬OKのカフェに食べに行きたいのだが、いつも泳ぎ過ぎて遅くなり、行き損ねてしまうのだ。宿に帰ってシャワーを浴びたら、ベッドに入って夕方まで昼寝してしまった。う〜に〜も爆睡していた。 
 6時に目を覚ましう〜に〜に食事をさせる。その後1階ダイニングで夕食だ。ここの食事には白ワインが合うような気がして今日は白。この日は3組3頭。シェリー君というゴールデンのご家族とは2泊とも一緒だった。3ヶ月の赤ちゃん(人間)もいるこのご夫婦は、周囲にとても気を遣っていて、もちろん犬も赤ちゃんも大切にされているのがわかる素敵なご家族だった。もう1組はこの日いらしたダックス連れご夫婦で、こちらも気さくな感じのいい方だったので、和やかな雰囲気で夕食を終えた。
 夕食の後はオーナーご夫妻と犬連れ旅のつれづれをとりとめもなく話しているうちう〜に〜は爆睡、看板犬のマリンちゃんも「もう寝ようよー」と言うので、う〜に〜のトイレを済ませて部屋に帰った。
 その直後から雨が降り出し「あーよかった」と喜んでいたら、夜中に台風の如き暴風雨となり雷が鳴った。雷は別段平気なう〜に〜はぐっすり眠っていた。


 翌朝起きたら雨と強風。一瞬止んだので急いでう〜に〜のトイレを済ませる。少し軟便になっただけで、下痢はしなかった。
 朝食後掃除と荷物整理をしているうちに雨が上がった。と言ってもこの日は帰るだけだが。2日間とも暖かく、楽しく泳げてラッキーだったと言えよう。チェックアウトして、また海沿いの道を通って帰った。途中の小室山公園で小休憩をとり、軽く散歩して、後はひたすら家路を急いだ。う〜に〜の濡れ濡れタオルや人間用の砂まみれのタオルをたくさん車に積んで。「早く帰って洗濯しなきゃ」いきなり現実に戻った私は、急に晴れて秋晴れとなった空を見ながらほっとしてそう呟いたのだった。