「何だかこの頃異様に暖かいなー」と思っていたら、一気に桜が咲いてしまった。全然考えてなかったけど、今回の旅行はちょうどいいお花見になるかも。そう思いながら、3月21日朝、自宅を出発した。行き先は長瀞。埼玉県は大型犬の泊まれる宿が少ない。今回やっと、1室だけ犬が泊まれるという宿を発見、2ヶ月も前から予約して楽しみにしていた。

 所沢まで渋滞に遭ったものの、午前中に長瀞に着いた。長瀞は桜の名所だそうだが、東京と違って桜並木の桜はまだ咲いていなかった。しかし七草寺の一つ、法善寺の枝垂れ桜は見事に咲いていた。
 秩父鉄道野上駅前の観光案内図を見る。少し先に、美の山公園という広そうな公園があるので、まずはそこを散歩することにした。
 美の山公園は、蓑山という山を利用して作られており、遊歩道の他、芝生広場や小鳥のさえずる森などがある。ここもまた桜の名所であるらしい。う〜に〜は芝生広場で走ったり、お決まりの枝齧りをしてゴキゲンだった。そしてコーヒーの空き缶を見つけて持ち歩いていた。普段からポイ捨てされた空き缶を拾って、環境美化に努めているのである。小鳥のさえずる森は、一面枯葉のじゅうたんだったので、その空き缶を使って「探し物ゲーム」をした。おもちゃなどを隠して探して持って来させる、う〜に〜の大好きな遊びである。コーヒーの匂いは強いので、う〜に〜は2回とも見つけることが出来た。

 今回の宿「プチホテルセラヴィ」は、長瀞オートキャンプ場の敷地内にある。チェックインの時間まで、キャンプ場や川原を散歩した。川原にはバーベキューをする人たち、そして川ではカヌーやラフティングをする人たちがいた。
 実はこのホテルは、今までのうに連れ旅行の中で一番料金が高い。と言っても、TV番組で見るような1泊3、4万円もする宿ではない。我が家の財政からして、毎月旅行する場合の宿泊代は1泊1万5千円以内と決めているのである。今回はそれを少し上回った程度。また、犬の料金は1泊2、3千円を上限と考えている。ここは大型犬5千円であるが、2泊しても同料金だったので(但し2日めの掃除は他の部屋と同じという条件)規定の範囲内であった。
 ホテルに到着すると、案内してくれたオーナーさんが、「狭い部屋ですみません。こんな感じだけど大丈夫ですか?」と心配そうに言う。入ってみると、ソファーに、ホットカーペットを敷いたスペースまであり、十分な広さだった。ホテルの中では一番狭い部屋なのだそうだ。「犬連れのお客様を差別しているようで・・・」と何だかとても恐縮していた。私たちはもっと狭い部屋に泊まったことは何度もあるので、広くて嬉しいくらいだ。
 犬同伴の部屋は、小さい庭と露天風呂がついており、庭から直接外に出られる。また車も横付けできて便利だった。とりあえず部屋で落ち着いた私たちは、用意されていたクッキー、梅干、オレンジを食べ、お茶を飲んだ。そして私は、予約制貸切露天風呂に行った。部屋の風呂以外に、予約して入る露天風呂と、24時間入れる家族風呂がある。ダンナとう〜に〜は寝てしまったので、私は1人で露天風呂に行った。熱めのとても気持ちよいお風呂だった。日が沈むのを眺めながらお湯につかっていたら、すぐ近くの木にシジュウカラがやって来て止まった。

 お風呂ですっかり極楽気分になったら、次はお待ちかねの夕食だ。食堂にう〜に〜を同伴できないので、部屋で留守番させた。食事は和食の懐石料理。季節の山菜やきのこをふんだんに使った、ヘルシーな料理だ。器も凝っていて、料理にマッチしている。(オーナーさん手作りだそうな)私は秩父ワインを飲んで、さらに極楽状態。締めにご飯ものとデザートが来る。デザートはイチゴとチーズケーキ。自家製チーズケーキで極楽がさらに加速したのだった。
 たっぷり2時間の夕食を終えて部屋に戻ると、う〜に〜が、部屋を出た時と同じ姿勢でマットに寝たまま尻尾を振っていた。寝る前に部屋の露天風呂につかり、「幸せ、幸せ」と言いながら眠りについた。ダンナは夜食にルームサービスで鮭茶漬けを頼み、「幸せ、幸せ」と言って(?)食べていた。う〜に〜はトイレを済ませ、おやすみのおやつを貰って「しあわせ、しあわせ」という顔をして寝ていた。こんなふうに、極楽な長瀞の夜は更けたのだった。



 翌日の朝食も、きのこたっぷりの和食。おかずが多いのでついついご飯をお代わりしてしまう。ヨーグルト、コーヒーもついてお腹いっぱいである。
 9時半出発。登谷高原牧場という所を目指す。途中に「百名水 日本水」という看板を発見したので、ちょっと寄って・・・・と思い車を降りて歩いたら、湧き水のありかまでは結構遠かった。やっと着いて、う〜に〜のボトルに水を汲んで「さあ戻ろう」と引き返したら、う〜に〜が途中で左に入る登り道の前で止まり「絶対この道を行く!」と言ってきかない。仕方なく言うとおりに登ったら、どこまでも続く登りである。これはいったいどこまで行ってしまうのか?車を置いた場所にちゃんと戻れるのか?不安はつのる。結局途中の東屋まで行き、そこから山道が幾つか続いていることはわかったが、戻れる自信がないので今来た道を降りた。「まったく余計なことして、疲れるじゃん。」と私はう〜に〜に文句を言ったがヤツはまるで聞いていない。嬉々として山道を下っていた。

 車に戻り、登谷高原牧場へ向かう。山をどんどん登って行って、牧場に着いた。エミューを見ていたら、好奇心の強い彼らはこちらに寄って来た。う〜に〜はひたすら地面の匂いを嗅いで「私はここにいませんよ」光線を発していた。ここで食べたソフトクリームは、さっぱりしていて美味しかった。売店でう〜に〜のために身体によいという黒米を購入して、牧場を後にした。
 朝食をしっかり食べたので、お昼になってもお腹が空かない。このまま昼抜きで宝登山に登ることにした。ロープウェーで登れば5分だが、犬は乗れないので50分のハイキングだ。道は険しくないが、暑さのためう〜に〜はバテ気味。駐車場のおじさんが言ったとおり約50分で頂上に着いた。頂上には動物園があるのだが、大型犬は入れないそうだ。残念。しばし景色を眺めて休憩し、下山することにした。
 下りは25分しかかからなかった。売店で焼きまんじゅうを食べていたら、激しい雨が降ってきた。
歩いている時でなくて良かった!後はもう宿に帰るだけだ。車に乗ってホテルに帰ったら、着いた時には雨は上がっていた。

 さて、部屋に帰って、まず露天風呂にお湯を入れる。お湯が溜まるまで、お茶とクッキー、梅干で一休み。そしてゆっくりお風呂に入って汗を流した。いやー極楽。風呂から窓越しに部屋の中を覗いたら、ダンナとう〜に〜は既に寝ていた。
 続いてダンナも汗を流し、さあ今日も待望の夕食タイム!!今日は他にお客さんがいないので、う〜に〜にTシャツを着せて食堂に連れて行った。 
 予約の時「食事の内容は変わりますが、どうしても食材が重なってしまうので・・・」と言っていたが、素材は同じでも料理内容も器も全部昨日と違っていて、全然飽きなかった。同じような献立にならないように、との作り手の気持ちが伝わる料理だった。もちろん美味しい。昨日は秩父ワインを飲んだけど、今日は樽酒にしよう。やっぱり和食には日本酒だねっ。とついつい酒も進んでしまい、こうしてまた極楽の夜は更けていったのだった。私たちは締めの鰻の笹巻おこわと菜めしをお代わりまでして、超満腹状態で部屋に戻った。
 9時40分、大露天風呂の予約時間。雨が本降りになっていたので、傘をさして行った。熱い風呂につかるのはとても気分がいいが、上から雨が降ってくるので長くは入っていられず、すぐに出てしまった。そしてこの晩も極楽気分で就寝。



 翌朝は雨が上がり、少し寒くなった。朝食をたっぷり食べ、部屋の掃除をしてチェックアウト。ホテルのスタッフ(全員女性)が見送りに出て来て、みんなしてう〜に〜を可愛がってくれた。夕べの食事時、う〜に〜は眠くてたまらなかったので、ほとんど動かなかった。それで「ものすごいお利口な犬」という評判になっていた。そんなことは全然知らないう〜に〜は、呼ばれて庭を走り回るわ、植えてある木の葉っぱを食べようとするわ、大はしゃぎだった。
 このホテルは、大きな宿では味わえない温かみのある良い宿だった。オーナーさんはじめスタッフは皆、ちょっと素人っぽいところがあって、たまにサービスにうっかりミスがあったりするのもご愛嬌。電話の応対などにも誠実さが感じられ、予約の段階で「部屋が狭いかも・・・」と心配したり「食材が重なるので・・・」と正直に言ってくれるところなども好感が持てた。東京からも近いし、周辺の山歩きには事欠かないし、またのんびり疲れをとりに来たい宿であった。

 宿を出た私たちは、桜のきれいな法善寺へ向かった。去年車山高原で知り合って以来親しくさせて頂いている、かすがさんと愛犬の諭吉君と、ここで待ち合わせしているのだ。
かすがさんは先に着いて桜を見ていた。昨日から気になっていた露天販売の「黒糖入り水羊羹」を買い、初日に行った美の山公園へ行くことにした。来た時にはまだ咲いていなかった桜並木も、今日は咲いていた。諭吉君は遊びたい盛り。普段あまり犬と遊ばないう〜に〜も、つられて「遊ぼう」ポーズをとって誘ったりしていたが、人出も多く、放して遊ばせることはしなかった。美の山公園を散歩し、長瀞駅前で蕎麦を食べた。(犬は車の中)
昼食後、かすがさんは「これから諭吉君と川の方へ行ってみる」と言う。う〜に〜にも川遊びをさせたかったが、ちょっと肌寒かったし、遅くなって渋滞にはまるのも嫌なので、また今度のお楽しみということにしてかすがさんと別れ、家路を急いだのだった。