2004/03　　雲丹爺 より

2003年、師走の深夜一時半過ぎ、いつものようにパソコンに向かっていた。
この部屋のほんの10mちょっとくらいの所を都道が走っている。この道は
深夜でもトラック、トレーラーなどが通り、この部屋は時々揺れたりもする。
もちろん車の音も聞こえてくる。

師走にしては暖かい夜だった。車の通りが途絶え、静かになったと思ったら
まるで、テーブルの上で裏返しになってしまった蝿の羽音のような音が
聞こえて来た。小さなエンジンのバイクに重いものを載せているようだ。
その音に何か妙な気合のようなものを感じ、つい聞き入ってしまった。
そして案の定というべきか、ブレーキ音もないまま何かにぶつかる音がした。
（「ぶつかる音」というより「潰れるような音」という表現が正しいかも、。）

ここに住んでいるとそんなことはよくあることなので、見に行く気はなかった。
しかし、近くのコンビニに用事があったので、少し時間をおいてコンビニに
行ってみた。するとコンビニのすぐ前にバイク２台、乗用車１台がとまり、
若者が二人倒れていた。もう救急車が到着し、何やら話しをしていた。

そんな状況の中、どこからともなくカメラを持ったオジサンが現れた。
オジサンのベストにはタクシー会社の名前が書いてあった。話しかけて
きたので、私も「その写真、マスコミに売ったりするんですか？」と失礼な
ことを聞いてしまった。
すると「会社までバイクで通っていて、ついつい運転がいい加減になりそうになる
ことがある。こういう写真を撮って残しておくと、交通安全のことを常に考えるように
なる。そのためにこういう写真を撮るようにしている。」とのことだった。

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私が運転する車に乗ったことがある人なら、安全運転をすることをご存知だと思う。
次の日の朝、私がそうなった経緯を思い出してみた。

若い頃、友達から譲ってもらった車で峠で危ないこともしました。
そして事故を起こしてしまったこともある。事故を起こした後はビクビクしながら
運転するものですが、半年も経たないうちに単独でまた事故を起こしてしまいました。
今度は無茶をしたわけでもなく、ほんの一瞬の居眠り運転というヤツでした。
内容はともかく、そこに気の緩みがあったことは確かです。

その後、随分と大人しい運転になりましたが、それでも峠に行けば丁寧ながらも
せめていました。丁寧といってもテクニックも幼稚だったので、あのまま続けていれば、
また事故を起こしたことでしょう。
そんな私がいつからこんな安全運転になったか思い出してみました。

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それはうーにーでした。うーにーが来た時分はまだまだ運転も荒くなることがあり、
信号が変わりそうになればアクセルを踏み、その勢いのまま右左折もしました。
しかし、それをすると車の後ろの方で「ドテッ」と大きな音がした。キャインという声が
聞こえたわけでもないが、そうしてしまう度に申し訳ないと思うようになった。
そしてうーにーは、車が動いている間、伏せている犬になり、私は安全運転に
なってゆきました。

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安全運転というものは、交通事故の写真を撮り続けるタクシードライバーが
いうように、努力しなければ続かないものなのかもしれない。
以前の私は気が付くと荒い運転をしていたことが何度もあった。今では、うーにーを
乗せていなくても安全運転をするようになりました。

免許をとって十年間、身に付かなかった安全運転を、私に教えてくれたのは、
うーにー以外の何者でもないことに気が付きました。人は犬をしつけます。
犬も人をしつけるんだな、なんて考えた師走の朝でした。