■ 何がどう変わったのか ■

注射済票について、赤、青、緑、黄の四色中より、毎年各回の注射ごとに、厚生大臣の指定する色とする。

それまでは色がついていなかったようです。
今では 「理由は分からないけど注射済票の色が毎回替わっている」とご存知の方は多いと思います。何年度の注射のものなのかが分かり易いようにしていることは想像でききますが、その経緯までは、私は知りませんでした。

施行規則の改正内容は以下となっています。

 別記様式第五を次のように改める。
別記様式第五
 (ここに図がある)
相当堅固な材料を用いた板とし、くびわに付着できるように穴をあける。その色は、赤、青、緑、黄の四色中より、毎年各回の注射ごとに、厚生大臣の指定する色とする。



(引用元)以下より入手した画像データを見て手入力しものです
もし誤字脱字等見付けられた方がいらしたらページ末尾からご連絡しただければ幸いです
大蔵省印刷局 [編]. 官報 昭和29年(7月)-(8月) 19540700-19540800, 日本マイクロ写真 (製作), 1954.  第8261号 P.239





■ 変わった箇所は? ■

「別記様式第五」とは、狂犬病予防法施行規則(注射済票の交付)第十二条第三項 で定められている注射済票の様式。

・図で変わった箇所
   (旧)       (改)
   保健所名     都道府県名
・説明文で変わった箇所は以下
   (旧)       (改)
   金属       材料を用いた
   附着       付着
・追加された文章
その色は、赤、青、緑、黄の四色中より、毎年各回の注射ごとに、厚生大臣の指定する色とする。


(改正前)

・板の大きさ 横 40mm 縦 20mm

・板に記載する事項
(一行目) 昭和  年度
(二行目) 第  回 注 射 済
(三行目) 第        号
(四行目) 保 健 所 名

・説明文
相当堅固な金属板とし、くびわ・・・附着できるように穴をあける。


(改正後)

・板の大きさ    <変わらず>

・板に記載する事項
(一行目)     <変わらず>
(二行目)     <変わらず>
(三行目)     <変わらず>
(四行目) 都 道 府 県 名

・説明文
相当堅固な材料を用いた板とし、くびわ 付着できるように穴をあける。その色は、赤、青、緑、黄の四色中より、毎年各回の注射ごとに、厚生大臣の指定する色とする。


細かいところまで見ると数箇所違う箇所がありますが、大きく変わったことは注射済票に毎年毎回色をつけること。
何故そのようなことをしたのか、法律を読んでも施行令を読んでも分かりません。その理由が理解出来るのが前回も紹介した以下の通達です。

○狂犬病予防法の一部を改正する法律等の施行について (昭和二九年八月二七日)
(発衛第二五七号)
(各都道府県知事各政令市長あて厚生事務次官通達)


上記通達は、厚生省から各都道府県に出されています。
たぶん読まない人が多いと思いますので、簡単に私の理解で説明します。


(改正の趣旨)
狂犬病予防法施行以来、狂犬病は減少しているが毎年相当数の発生があるので、その対策として「野犬の捕獲を徹底する」「野犬化防止対策を確立」を行うことにした。


(対策)

・野犬化の根源の一つとして所有者が不要となった犬を放してしまうことがある。その犬を引き取ることで対策とする。

・(狂犬病が発生していない時でも)野犬(所有者のいない犬)の捕獲を徹底させるために予防員に必要最低限の立入権を与える。

・公示後の猶予期間を一日に改めたのは、実情からであり、また効率を考えてのことだが、一日だとやむを得ない事情で来られない場合もあるので、但書にて例外を認めた(野犬化しないことが目的)。

狂犬病発生時は、区域・期間を定め全ての犬を対象に、係留されていない犬の抑留ができることになっているが、予防注射済みの犬については、所有者に係留するよう注意を与える程度にとどめ、主として未注射犬を抑留するように指導する。
※このために、各回の注射毎に所定の色を着けることにした。

・最後の非常手段として「けい留されていない犬の薬殺」が認めらるようになったが、できる得る限り抑留の方法をとり、抑留することが不可能な場合にのみ薬殺の方法をとること。


このように、狂犬病発生時の係留のお願いの徹底と効率化のために注射済票を毎回色を変えることにしたのです。
これをしなければ、係留や抑留が効率的に出来ず「けい留されていない犬の薬殺」が頻繁に行われることになったのかもしれません。

法改正当時(昭和29年)狂犬病の根絶を目指し国をあげて対策を施していました。その結果が実り、昭和32年の猫の発生を最後に、国内での発生はなくなり根絶に至ったことになっています。



根絶に至ったことは大きな成果です。
もし今も狂犬病が日本に根付いていたら、野犬の捕獲は徹底して行われることになるでしょう。
また、放浪犬を保護した場合、とても慎重に扱わねばならなくなります。

今、日本が世界に稀にみる清浄国であることが、どれだけ有難いか再確認できるとおもいます。


もし内容に間違いがあることをお気づきの場合、疑問点がおありの場合等、以下の「こちらから」ご連絡いただければ幸いです。

2024.9.30 2025.5.6
2024.9.30 公開
2025.5.6 引用元変更「官報検索!」⇒「国立国会図書館のコピーサービス」
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