(登録)
第四条 犬の所有者は、厚生省令の定めるところにより毎年一回その犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長(都の区が存する区域にあつては区長とする。以下同じ。)を経て犬の登録を申請しなければならない
2 都道府県知事は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を前項の市町村長を経て交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない
4 都道府県知事は、犬の登録について、一頭につき一年三百円以内の手数料を徴収することができる

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引用元は以下(これを私が手入力しました、なので間違っているかも)
狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号




・今の法律と似ていますがこの条文を読むと、最終的に管理するのが「国」に読めます。
・手数料の上限(300円)が書かれている。今の条文にはない。
※平成7年に値上げされ、現在は 3,000円の様ですが、値上げされた時は「地方公共団体手数料令」に書かれたそうです。その後、その政令は廃止され「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」になります。こちらの政令の中に犬の登録手数料の項目が見つかりません。どなたか、現在何処で定められているのかご存知の方は教えてください。



 毎年、登録

記憶に残っている方もいらっしゃると思いますが、昔は毎年登録でした。
なので「犬」シールが毎年いただけて、門やポストにいっぱい貼ってある家もありました。
現在、登録は一回だけで継続されますが、犬が亡くなった時に手続きをする必要があることが周知されずに、登録が残ってしまうケースがあるようです。
それに対して、狂犬病予防法施行規則(昭和二十五年厚生省令第五十二号)施行日: 令和四年六月一日(令和四年厚生労働省令第八十六号による改正)を読むと、諸事情勘案した上で、生後二十五年以上である場合は削除できるらしいです。(登録の削除)第十条一


 毎年300円

登録手数料が毎年300円ですが、現在の価値ならばどれくらいかを考えてみたい。
ネットで「昭和初期の物価」で検索し、比較できそうな表があるものを探して、以下のページを使うことにした。
明治・大正・昭和・平成・令和 値段史コインの散歩道
犬の登録手数料は日用品でも娯楽品でもなく、収入の余裕で支払うものと考えて「6. 給料・賃金(その1-職種共通) 」の表を使う。
何となく実感がわいたものとして「国家公務員初任給」の欄で今の物価と比べてみたい。
300 × (令和4年)189,700 ÷ (昭和25年)4,223 = 13,476(小数点以下切捨て)
何と比べるかで違ってきますが、感覚的に1万円以上の感じはあったと思います。
上記サイトの「5. 外 食 」ページの駅弁欄が30円 50円、コーヒーが30円とありますので「子供にちょっと渡す程度の金額」ではなかったことは確かです。

今の時代であれば、ヨーロッパには年間(為替換算で)一万円以上の犬税がある国はあります。豊かな今の時代だからこその金額だと私は考えます。


 犬の飼い主になるということ

犬を登録をすれば、その犬の飼い主となります。当時それがどのような意味だったのか考える時、小川未明作「青い石とメダル」を思い出す人は多いのではないでしょうか。
ご存知ない方は、ネットで検索すれば内容を理解出来ると思います。繋がれていない犬の中にも飼い犬(登録された犬)がいることが分かります。

この作品の初出は昭和7年なので、昭和25年とは状況が違うかもしれません。
未明は(私の記憶が間違っていなければ)昭和7年当時、高円寺に居を構えていたはずです。当時の高円寺は「青い石とメダル」に出て来るような場所であり、狂犬病の脅威があり続けた「東京」の一部であったことでしょう。それは昭和25年でも似たような状況だったのではないでしょうか。

「東京で犬の飼い主になるということ」がこの作品から想像するような立場だとしたら、それに(今の価値で)一万円以上を毎年支払うのはどういうことなのか。
あまりに時代が違うので想像し難いことは確かですが、安易に登録できる金額ではないことは確かだと思います。




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2023.8.262023.8.26
2023.8.26 公開
#法律 #狂犬病 #狂犬病予防法 #1950 #登録