「法律など」と曖昧な表現を使いましたが、昔の法律を今の感覚で法律と呼んでいいものなのかとおもうことがあります。なので曖昧に表現しました。
そんな遠い昔にも身近な動物に関する法律がありました。それらは現在の法律を考える上では参考になりません。世の中(時代?)が違い過ぎるから。
今後取り上げてゆく予定の「動物の愛護及び管理に関する法律」は、動物愛護、動物の管理に関しての法律であり、それを規定するために動物福祉を基にしていますが、昔はそのような考えはありませんでしたので、その意味でも参考にすることはできません。
そんな参考にならないくらい古い法律(?)のことを少し書いてみます。
天武の勅令
生類憐みの令
明治の後半 ~ 第二次世界大戦直後
(おまけ)GHQ活動終了後 ~「動物の保護及び管理に関する法律」成立
(私がおもうこと)宗教や外国からの後押しがあって成立していた
これは古いです。西暦675年(飛鳥時代)と言われています。小学校で習った大宝律令が701年といわれていますので、国家らしきものが出来つつある時代のことです。
この法律は「天武天皇が牛・馬・犬・猿・鶏を食べることを禁じた」もので日本初の肉食禁止令と言われています。
今でも記録に残っているのですから国として形はあったとおもわれますが、全ての国民にその法律を守らせるために今の警察組織のようなものがあるはずもないし、そもそもその法律を日本全国に伝えることは出来なかったことでしょう。
そのような意味でも今の法律とは違うものです。
私が小学校の時に仏教伝来と教わった時代のことだと思います(今は仏教公伝というらしい)。大陸から色々な文化が入り始めた時期。猫がやって来た時期とも言われています。
そのような時期に何故食肉禁止令をだしたのか不思議におもい少し調べてみると、ただ禁止した訳ではないようです。
動物の種類が示されていますが、これは大陸から受け入れたばかりの仏教に関係するらしいです。
わざわざ禁止するくらい食肉が行われていたようですが日常食ではなく儀式的なものの供物として使用されていたようです。その儀式が行われることが多い時期だけ禁止していたと書かれた資料もあります。
それまでの世の中は、法律もなかったし、今の宗教のようなものもなく庶民は原始自然信仰的なものをよりどころにしていたと想像され、その習慣(風習?)をなくそうという考えもあったようです。
このように法律と言っても今とは違うので、現在の法律を考える上で参考になることは少ないですが、国という形が出来始めた時期でさえ動物に関わることを法律で定めようとしていたことは興味深いです。
生類憐みの令
この名前を聞いたことがない日本人はほとんどいないと思います。そして「犬猫を大事にし過ぎて人間を虐待した悪法だよね」と記憶に残っている人もいらっしゃるかと思います。
実際のことは私には分かりませんが、天武の勅令が出された頃よりも世の中が複雑になっていたことは確かで、運用についても複雑にならざるを得なかったことも想像できます。
さらにこの法律は一つの法律ではなく幾つもの法律の総称であり、単刀直入に語れるものではありません。
犬猫だけが対象と理解している人もいるようですが、鳥、魚類や貝類、昆虫にも及びました。真偽は定かではないですが蚊を殺したため閉門という重い処分を受けた人がいるとか。
これだけを聞くと「酷い!」と感じて当然ですが(最近は知る人も多くなりましたが)この法律は動物だけでなく人間も対象にしていました。嬰児・幼児、病人、高齢者などの弱者も保護しましょうという内容もありました。
江戸時代の前は安土桃山時代、その前は戦国時代です。人の命も今とは比べようもないくらい軽いもので、戦や諍いも絶えないのが世の常だったのでしょう。
徳川幕府は初代将軍である徳川家康が天下太平の礎をつくり、続く将軍たちは儒教の教えを基に政をしてきた流れの中で、この生類憐みの令となったのだと思います。
「だと思います」など頼りない書き方をしますが、ここは私の知識をメモ的に書いて、読んでくださる方が興味を持てば各自腰を据えて調べていただければと考えています。
親切丁寧な情報はネット上にも多々ありますし、図書館でも資料を借りることが出来ます。
目に入ったページの情報だけで世の中を見てほしくありません。
動物のことに限ったことではないのかもしれませんが、調べない人たちが世間を混乱させているように感じることがあります。昔に比べれば調べることは簡単です。
もしあなたが身近な動物とより善い関係が築ける世の中を望むのであれば、生類憐みの令について一度調べることをお勧めします。
「こんな世の中にしたいからこんな法律を作ろう!」と苦労し、やっと実現しそうになったら、一部の人たちが理解してくれずに悪評を流布されてしまった、となりそうな時、過去の悪法とも呼ばれるものを調べておくことはためになることだと私は考えています。
明治の後半 ~ 第二次世界大戦直後
上記に二つの法律のことを書きましたが、勿論これだけではありません。仏教の教えからか肉食を禁止した法律は何度も出されているようだし、江戸時代には儒教の教えからか動物愛護的な法律が幾つも出されたと何処かで読んだ記憶があります。
このように江戸時代までは宗教による影響が強かったようですが、明治からは欧米文化からの影響が強くなってゆきます。
江戸時代から明治になり諸外国との交流が盛んに行われ、政治家や経済界の人たちが欧米で学び日本を大きく変えてゆきました。同じように身近な動物に対する考え方も欧米で学んだ人が声をあげ、活動するようになります。
そのような活動があり、明治34年に牛馬虐待取締の訓令が出されます。法律ではなく訓令であり、これにより各地で取締規則が作られることになりました。
ただし、このような動きは日本人の自発的なものより海外からの影響も強かったし、日本に暮らすようになった要人の夫人や令嬢などが大きく関わっていたこともありました。五千円札の肖像にもなった新戸部稲造のメアリー夫人が有名ですが、当時活動の中心は日本に暮らす欧米の人々の力が大きかったようです。
法律を作ることを考えていたようですが動物のことを考える人たちは一部の人たちであり、法律という国全体のルールにするのは困難だったようです。
当時は女性の参政権もない時代です(当時女性は政治演説会を主催したり参加するだけでも禁止されていました)。
また日本も海外で戦争をしていた時代でもあります。動物愛護の精神を普及させるだけでも困難だった時代だと考えています。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の支配を受け日本国憲法もその時に作られましたが、その占領下の終りの方に「動物虐待防止法案」が国会への提出準備までなされたようです。ここでも欧米の人たちの力があってのことだったようです。
法律とは関係ありませんが、GHQ関連の人の協力により(今でいうところの)TNR活動がされたという記録を読んだ記憶もあります。
(おまけ)GHQ活動終了後 ~ 「動物の保護及び管理に関する法律」成立
日本はGHQの支配を解かれ「動物虐待防止法案」から10年後にも提案されたようですが、これも実現することはありませんでした。
その数年後日本では東京オリンピックが開催されますが、その前後にも署名活動や法案作成などがなされと読んだ記憶があります。
東京オリンピックの頃以前の日本は国際的な状況から欧米に行くことすら簡単ではありませんでした。それが解消されつつあり1964年の東京オリンピックが開催されることになりました。
その頃になると日本は経済的も豊かになり欧米との輸出入もし易くなってきました。日本国内で犬や猫を輸入することを考える人も増えます。輸入先の国の中には「日本は動物を大切に扱っているのか?」と危惧する人も少なくなく「身近な動物に関する法律がないじゃないか!」と日本との取引を渋った人たちがいるとか。
そのようなこともあり国内で「動物のことを粗末に扱うことを禁止する法律を作ろう」と1973年(昭和48年)「動物の保護及び管理に関する法律」が成立したと幾つかの資料で読んだ記憶があります。
(私がおもうこと)宗教や外国からの後押しがあって成立していた
「天武の勅令」は入ってきたばかりの仏教が、「生類憐みの令」は仏教よりも前に日本に入ってきたと言われる儒教が大きく関わり、「動物の保護及び管理に関する法律」は犬や猫の輸入国からの見られ方があって成立に至ったと言われています。
そうおもうと、自国内だけの力だけでは有り得なかったのではないか。また庶民は生活の苦しさから、そのら法律を理解出来なかったのではないか。
それに対し、1999年の大改正は自国内の力がほとんどといってもいいくらいだったと感じている。日本人(の庶民)が生活の中で感じていることから湧き上がってきたものだと私は思っている。
それは庶民も海外の文化・習慣を知る機会を得やすくなったり、海外の生活を経験した人が増えたからかもしれない。
大改正当時も「イギリスでは~~」「ドイツでは~~」と欧米に習うべきと主張する人たちはいました。それでも全体としては多くの日本国民が求める姿になっていったのではないかと感じています。
この流れはとても喜ばしいことだと私は思っています。しかし時々残念におもうこともあります。
今の日本人は(庶民と呼ばれる人たちだけでなく)しっかり勉強されたと言われるような人たちの中にも動物の知識が乏しい人がいることが気になります。そのことについては機会があれば書きたいです。まずは法律のことを書いてゆきます。
以上あくまで「私の記憶・理解」です。もし何か間違った内容を書いていたり、疑問点があったりしたら以下の「こちらから」ページからお知らせいただけると幸いです。
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